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ヒヤリハット・事故報告事例に関わるコミュニケーションエラーの実態と対策

 

Ⅱ.院内アンケートから見るコミュニケーション(情報伝達)阻害要因

 事故には繋がらないまでも、潜在的に存在しているコミュニケーションエラーを含めると、実際の阻害要因の割合はどうなのか。これらを調べるため、院内にてコミュニケーションに関するアンケートを実施した。
 対象者は看護職員と事務職員とし、実施者313名、有効回答数275と、病院職員の54%に該当する回答数を得た。各阻害要因ごとに、業務内で起こり得る情報伝達阻害状況を全25項目設定し、情報伝達が阻害される状況を経験する頻度が高いほど高得点(4点)とした。得られた回答は要因ごとにまとめ、職種別に平均点を算出した。(表5)
 まず目を引くのが「情緒的共有」と「誤伝達」に関する阻害得点の低さである。「誤伝達」は本人に認識されていないだけで発生はしているという可能性が残るが、他の要因に比べて、相手に対する好悪の感情や、思い込みなどによる誤りは、それほど情報伝達を阻害する影響がない事を示している。
 いちばん高得点であったのが「地位の共有」だが、次に続く「知識の共有」、「情報の共有」、「主観的確信」などは、前述したヒヤリハット・事故報告事例内での分類と同様、院内におけるコミュニケーションに大きな影響を及ぼす要因であることがわかる。
 「地位の共有」に関しては、職種別に「相手の立場が上の場合、自分の意見を述べにくいことがあるかどうか」の質問を行った。「時々ある」「よくある」との回答が圧倒的に多かったのが医師に対する場合であり、割合としては80%にのぼった。
 「各職種に対するコミュニケーションの必要性と充足率」に関する質問においても、医師に対する充足率が一番低い結果となり、他職種と比べて医師に対しては、必要性を満たすほどにはうまくコミュニケーションがとれていないという、地位などの立場の差による影響が如実に表れていることがわかる。

職種別 情報伝達阻害得点比較

 また、コミュニケーションに関して問題となっている点などを自由記述で回答してもらったところ、全体的に「情報の共有」に関する意見が数多く見られ、情報共有の重要性を強く感じている職員が多いという現状が浮かび上がった。しかしながら、「伝達手段に工夫を凝らしても周知が行き届かない」、「手間を惜しんで不確実な伝達手段を選択してしまう」といった意見も見られ、全体で同一の情報共有を行うことが困難である様もうかがえる。
 一般的には情報伝達には文書が適しているとされているが、院内においては、文書を書くこと自体を「認知的コスト」が高い、つまり面倒であると感じるという回答が多く、特に事務員にその傾向が強かった。また、「文書で指示を受けた際に誤伝達が発生しなかったか」の調査では、誤伝達の発生が「全くない」との回答は約37%にとどまっており、有用な手段も使用の仕方によっては利点が生かしきれないということが推察できる。