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精神科クリニカルパスを広めるための体制作り

3.パスに対する無理解・誤解にどう対処するか

 これらの問題への対処には2つの方向が考えられます。まずはパスの普及に際して行なう教育や、パス開発上の工夫です。パスへのいわれのない批判や抵抗に自信を持って対処するには、"なぜパスを導入するのか"をパス推進のキーパーソンがよく理解しておく必要があります。また、パスに対する誤解や偏見には下記のような配慮が役立つかもしれません。

1) その施設ですぐに役立つパスから作る

 疾患群別、状態像別などから手をつけるのがなかなか難しいのであれば、すぐに役立つパスから作成し、早くパスを体験してもらうと良いでしょう。あれこれ説明を行なうよりも確実にパスのメリットを理解してもらえます。
 例えば、精神科病棟では稀にしか行なわれない検査・処置のパスがあれば、急にオーダされても慌てず安全、確実に実施できるようになります。また、定期検査の日程がパスに組み込まれることで、オーダ忘れが防止できます。特にオーダリングシステムが導入されている場合、慢性期患者の身体管理だけでなく、外来患者の年間治療計画にも貢献することでしょう。更に、精神科独特の事務手続きや書類作成を確実に行なうため、既にチェックリストとして運用しているものをパスの中に含むようにすることで、入退院時など一連の作業の中で忘れずにチェックできるようになります。

2) できる限り業務が簡略化、効率化できるようにし、パスを使いたくなるようにする

 パスの項目をチェックし、簡潔に記録すれば済むようなシステムに近づけることが大切です。このためには、現在使用している帳票について、重複記載をしているものがないか、一連の業務にかかわる書類は統一できないか、決められたタイミングで記載する帳票はないかなどをその運用方法とあわせて見直していきます。
 例えば、入退院時は非常に書類や手続きが多くなりますが、パスの作成にあわせて、一挙に紙を減らしてしまえば、パス導入のインパクトは強まります。

3) 標準化と個別性は矛盾しないことを示す

 何でもパスにするのではなく、あらかじめ標準化する部分、しない部分を明確に分けておけば混乱を防ぐことができます。個別性の高い処方、精神専門療法など最初は扱わない方が良く、対象期間も入院から退院の全期間ではなく、標準化しやすい特定のプロセスに焦点化して作成するのが良いでしょう(例えば、入院後7 日間など)。
 実際にパスを作り始めてみれば、自分たちのやり方にそれ程バリエーションがないことに気づくのですが、"個別性が高いから無理"という反発が予測される場合は、データに基づいて交渉する必要があります。少々手間はかかるものの、パス運用後にも大切な資料となりますので、データベース化しておきましょう。

4) 集合教育と草の根運動を組み合わせて続ける

 新しい考え方を普及しようとするので、当然のことながら繰り返し「クリニカルパスとは何か?」を説明し続けることが大切です。とかくカタカナ言葉は敬遠されますが、パスは普段自分たちが行っている臨床実践を言葉にする作業だということを早く理解してもらうように努めます。決して、できていないことを反省したり、理想のケアを作り出す場ではないのです。異なる職種が互いに何を考えているか理解しあうことが何より大切なプロセスなのだと実感してもらえるよう、働きかけることが重要です。
 講演会や病棟学習会で大きな集団を対象に説明するだけでは不十分で、パスを開発するメンバーには実際のパス作成の場面で教育を続けることが必要です。病棟や部署単位でパスを作成することが多くなると思いますが、「とりあえず作ってみよう!」と気楽に始められるグループは良いのですが、真面目なグループはパスについての勉強会で挫けてしまい、開発まで辿り着かないこともありますので、サポートは欠かせません。

5) 他施設のパスはショック療法になる

 身体疾患のパスを作成する際は、他施設のパスを参考にすることで、一気に治療・ケアの質改善を図ることも可能ですが、精神科の場合は一筋縄ではいかないようです。 " うちはうちのやり方だから"と一蹴されかねませんので、あくまでも参考程度に用いるつもりで関係者に提供するのがよいでしょう。しかし、実は後々までかなり影響力が続きます。先進的な取り組みを行っている施設の情報は、パス推進の動悸付けを保つために上手に活用したいものです。

掲載している情報は、取材時もしくは掲載時のものです。

【掲載】2004年11月05日