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フィンランド精神科急性期医療における隔離・身体拘束

フィンランド 隔離・身体拘束の実際

フィンランドにおけるS/Rの実際を理解するために、病棟の人員配置、病棟の造り、緊急時コールシステムについてまず説明する。
 人員配置であるが、18床から20床の急性期治療病棟に、日勤7人、準夜3人、深夜2人で、そのうち必ず1人は男性が入る看護配置である。 病棟を担当する医師は、一人は経験のある医師、数人は若手である。入院治療早期から多職種での関わりが行われており、病棟担当の作業療法士、心理士がいる。
 病棟の造りは、病室は2人部屋を基本としている。精神科病棟での身体的処置はないため、病室には家庭にあるようなベッドが置かれ、机と椅子、ロッカーがある。共有スペースとしては、食堂、キッチン、居間の3つのエリアが設けられ。共有エリアでもパーソナルスペースが確保しやすい環境が整えられている。 隔離室であるが、処置用のスチールパイプのベッドのみがあり、壁、天井は白のシンプルな部屋である。隔離室前室があり、そこに洗面、トイレが備えてある。基本構造は日本の隔離室と変わらない印象を受けた。ただ隔離室は緊急時の処置用として用いられており、S/Rが解除になると自室に戻ることになる。これらの個室、共有スペース、面談室、隔離室内の様子を写真で示した。色彩に配慮し、木質の家具を使った、落ち着きのある空間作りがなされていた。

■Psychiatric clinic of the Helsinki university central hospital
2人部屋(閉鎖病棟) デイルーム(閉鎖病棟)
2人部屋(閉鎖病棟) デイルーム(閉鎖病棟)
看護面接室(触法病棟) 隔離室(閉鎖病棟)
看護面接室(触法病棟) 隔離室(閉鎖病棟)
■Kellokoski Hospital
2人部屋(閉鎖病棟) 食堂(リハビリ病棟)
2人部屋(閉鎖病棟) 食堂(リハビリ病棟)
外の待合い(閉鎖病棟) 合同面接室(閉鎖病棟)
外の待合い(閉鎖病棟) 合同面接室(閉鎖病棟)
隔離室(閉鎖病棟:医師・病棟スタッフによるデモ)
隔離室(閉鎖病棟:医師・病棟スタッフによるデモ)

次に緊急時コールシステムを説明する。 スタッフは全員、緊急コールを身に付けている。緊急時にこのコールがスタッフによって押されると、他のスタッフのレシーバーが鳴り、迅速にスタッフが駆けつけることになっている。特に男性スタッフのレシーバーには緊急事態の発生場所が示される仕組みになっており、男性スタッフが素早くかけつけてくる。患者は男性スタッフに囲まれることで静穏化することもあるという。その後、担当スタッフが患者と面接をし、必要であれば経口内服を用いる。
 それでは、実際にS/Rが行われた場合について説明する。隔離が行われた場合は、看護室にあるモニター観察を行い、30分ごとに隔離室を訪問し観察する。身体拘束が行われた場合は、看護師一名が必ずドア近辺に座り、常時観察を行う。看護師の心理的負担の強い暴言がある患者については、15分で交代する。会話が行えるようになると1時間ごとの交代となり、治療関係を構築していく。そしてタイミングをみて、内服、飲水をすすめていく。30分ごとの記録がなされ、スタッフ間での話し合いは密に行われている。もし、夜間帯の常時観察の必要性が生じた場合は、看護師が補充されることが法律で規定されている。
 S/R終了後は、患者の状態に応じて、看護師は常時観察を行う。常時観察の程度や終了についてもスタッフ間で話し合いながら行われる。
 日本の場合、50床の救急入院料病棟の場合、例えば看護配置は、日勤9人、準夜3人、深夜3人であろう。フィンランドの対患者あたりのスタッフ配置は半分以下となる。さらにフィンランドでは、常時観察の必要時は看護師の増員が可能という柔軟性を持たせている。
 常時観察の有無が、急性期治療にどのような効果をもたらすか、日本においては重大な課題である。

掲載している情報は、取材時もしくは掲載時のものです。

【掲載】2007年11月09日