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フィンランド精神科急性期医療における隔離・身体拘束

日本 精神保健福祉法とフィンランド Mental Health Act

日本とフィンランドのS/Rに関する法律に、参考としてアメリカのJACHO (The Joint Commission on Accreditation oh Health Care Organization Standards)の基準をあげ(文献9)、S/R開始から観察、解除に至る場面ごとに、法律や基準の相違点を示す(表2)。それが医療現場にどのような影響を及ぼしうるのか考察する。
 開始においては、フィンランドとアメリカではスタッフが開始することができる。開始したスタッフは速やかに医師に連絡をし、それを受けた医師が診察し指示するとある。日本ではスタッフによる開始は認められておらず、精神保健指定医の診察があってから開始となる。この規定から考えられることは、緊急性があって危険性が高い病状に対して、精神保健指定医が病棟に到着するまでの間、スタッフだけでは対応が不能となることが考えられる。こういった状況を回避するために、日本の場合、S/Rが早めに開始されている可能性があることを念頭においておく必要がある。日本の精神保健福祉法にある、判断をより専門性の高い医師が行うことには大きな意味を有しているが、緊急時の対応について問題を残している。
 継続指示においては、フィンランドでは24時間ごと、アメリカでは4時間ごとに、医師が診察を行った上に、継続指示を出す必要がある。日本の場合、これらより長く継続指示は1週間としている。アメリカの1回のS/R期間が短いことは、4時間ごとの継続指示という基準が関係しているのかもしれない。 観察においては、フィンランドとアメリカは一対一の看護師による常時観察を原則としている。看護師は細かな観察をし、興奮状態の変動に応じて部分的な解除を試みることが可能となる。日本にはこのような規定はない。
 終了においては、アメリカでは解除基準に達したらスタッフは患者を直ちに解放する必要があると定めている。日本とフィンランドにおいては解除者について明記されてはいない。東京の実地指導では、実際上は、医師が指示し、看護は指示を受けと実施する。医師の指示なしにスタッフが解除することは行われていない。
 その他に、フィンランドでは、S/R中のケアについてスタッフ間での話し合いをするように求めており、アメリカではS/R解除後にはS/Rに関わったスタッフ、患者本人や家族でデブリーフィングを行うよう求めている。
 医師の診察・指示・記録の必要性は三カ国の法律・基準とも同様に求めている。しかし、スタッフの役割については、フィンランドとアメリカの法律・基準には日本にはないものが存在している。まず開始・終了をスタッフが行うことができる。そしてスタッフによる密な患者観察を行い、さらにはスタッフ間で情報交換や話し合いを行うことを求めている。このような違いによって、病棟での実際のS/R運用にどのような差異が生じるのか十分に検討していく必要がある。

表2 日本、フィンランド、アメリカのS/Rに関する法律ないし基準より、場面ごとの比較

表2 日本、フィンランド、アメリカのS/Rに関する法律ないし基準より、場面ごとの比較

    a) 日本:精神保健福祉法
    b) 日本医療機能評価機構ver5
    c) 東京都実地指導
    d) フィンランド:Mental Health Act (トゥルク大学Korkeila教授が英訳したもの)
    e) アメリカ: The Joint Commission on Accreditation oh Health Care Organization Standards
    f) LIP; licensed independent practitioner

掲載している情報は、取材時もしくは掲載時のものです。

【掲載】2007年11月09日