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フィンランド精神科急性期医療における隔離・身体拘束

フィンランド隔離・身体拘束 大規模調査

 精神科医療において収容型治療からコミュニティケアへと脱施設化が進むことで、患者の治療参加、自律性が高まることになる。それにより自ずと患者の自律性に制限が及ぶ非同意入院や強制治療には関心が強まることになる。はじめに述べたように、フィンランドでは、地域によってS/Rの使用頻度が異なるのではないかと人権を擁護に関わる法律家から提起された。それを受けて1996年のS/Rに関する大規模調査となった(文献1)。フィンランドでは、医療圏(catchment area)が厳密に定められており、居住地によって、プライマリーケアや専門医療を受けるところが明確に定められている。調査は3ヶ所の医療圏、人口35万7000人(国の人口の7%にあたる)を対象に行われた。その結果、オウル地域ではトゥルク、タンペレ地域と比し、有意に身体拘束の使用頻度が高く、隔離の使用頻度が低いことがわかった。S/Rの使用が地域ごとの伝統的治療技法によって異なることが以前から指摘されていたが、医療圏ごとに比較するという方法を用いたことで、地域ごとに差が生じうることが明らかにされた。この調査を経て、2002年に精神保健法が改定され、S/Rの使用について2週間毎に地域に報告することが義務づけられた。こうして今もS/Rモニターを継続しており、S/Rに関する医療の質向上に取り組んでいる。
 2007年にはS/Rに関する15年間フォローアップ調査の結果が報告された(文献4)。1990年から2004年の間に5回、それぞれ1週間、6医療圏での対人口あたり隔離の発生頻度、身体拘束の発生頻度が調査され、その結果、S/R発生頻度は全体としては徐々に減少していた。しかしながら医療圏によって身体拘束の発生頻度が多いところが依然としてあり、地域差は同様に続いていた。この報告には、S/Rの報告義務だけでは地域差の改善にはつながらないため、教育やガイドラインの策定が必要ではないかと述べられている。またこの調査結果では、 1990年に中央値約6時間であった隔離継続時間が、2004年には17時間に増加していた。この理由として、行動制限に関する法的基準が厳しくなり報告手続きが煩雑になったことから、再隔離を避けるために隔離終了を慎重に行っている可能性をあげ、注意を喚起している。
 1996年の大規模調査に戻るが、ここでは患者の入院あたりのS/R時間が報告された。隔離時間の平均が35.8時間、中央値が13時間、身体拘束時間の平均が19.4時間、中央値が9時間とある.当時、患者ごとのS/R時間を報告したものはほとんどなく、フィンランドが他のヨーロッパ諸国と比べ使用時間が長いのかについては議論できなかった。その後、調査方法が異なるものの、アメリカ、ドイツ、スイスでの多施設調査の結果が報告された(文献5,6)。表1に示したように、1回が数時間と短く、回数多くを繰り返す手法(ペンシルバニア、ドイツ)と、1回の時間が長く、1、2回程度繰り返す手法(フィンランド、スイス)があるようだ。
 さらに表1にはオーストラリアの調査結果も示した(文献7)。オーストラリアでは医療の質測定がAustralian Council on Healthcare Standardsのもと行われている。その指標の1つである「1回の隔離で4時間を越えて行ったものの割合」結果では、隔離のおおよそ6割以上が4時間以内で解除となっていることがわかる。 この表1には1999年の日本のS/R調査の結果として、調査日にS/Rが行われていた患者の継続期間の割合をのせた(文献8)。1ヶ月を超えて継続されていたものが、隔離は34.7%、身体拘束が59.3%であった。日本のS/R時間が、他の国とは測定方法が異なるものの、長期に渡っていることが予想される。

表1 各国のS/R大規模調査の結果

表1 各国のS/R大規模調査の結果

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【掲載】2007年11月09日