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医療法人成精会 刈谷病院

刈谷病院の特徴

地域特性

 刈谷市は愛知県西三河地区西端に位置し、古くは刈谷藩主水野勝成が治世する城下町として発展してきました。恵まれた海の幸と、台地端からの豊かな湧水は定住者数を増進し、自然の利を活かした地場産業を育んできました。
 昭和2年にトヨタ自動車の源流となる豊田自動織機製作所(現豊田自動織機)刈谷工場が完成したことを端緒に、現在はトヨタグループ主要企業の本社・工場が集結する国内有数の自動車工業都市が形成され、刈谷市の優良な財政基盤を支えています。刈谷病院(以下、当院)は、刈谷駅(JR東海道線・名鉄三河線)から徒歩10分の住宅地に位置し、駅周辺は刈谷合同庁舎をはじめとする公的機関が建ち並び、清潔で静かな街並みを抱きます。

創設理念の進展を促す新たなフェーズ

刈谷市障害者支援センター
刈谷市障害者支援センター

 当院は、昭和38年に初代院長の中野啓次郎が現在の地に創設した75床を起点に機能の拡張と増床を進めてきました。その後、昭和59年には276床を有する中規模の精神科病院として現在の原型が形作られました。
 中野啓次郎は当初より、「患者さんに丁寧に接し、地域に根差した医療を提供する」という方針を打ち出し実行してきましたが、平成元年の医療法人化を契機に、それまでの方針を現在にも継がれるべき「理念」として明文化、具体的なミッションとして入院医療中心から外来重視、地域医療の進展に向けた活動を加速させてきました。
 地域医療の先駆けともいうべき精神科デイ・ケアを平成4年にスタート、平成12年にリハビリセンター「コンチェルト」を開設、同年ナイト・ケアの認可も取得、デイ・ケアと作業療法の充実を図るとともにプログラムの多様化と参加者の増加に伴い、平成16年に第2デイ・ケアを開設しました。加えて平成7年には「訪問看護センター」を開設、平成17年からは、広域な地域支援へ機能を拡張させた「成精会 訪問看護ステーションH.E.J.」を稼働させました。
 退院後の生活支援では、平成13年に精神障害者社会復帰施設グループホーム「ブルースカイ」、同年、共同住居「ぬくぬく おおぐて」「ぬくぬく むかいやま」を開設しました。また、平成21年には刈谷市が開設する刈谷市障害者相談支援センター「こころ悠々」の運営を当法人が指定管理事業として受託。現在は「こころ悠々」等を内包し、3障害に対応した地域活動・自立訓練・就労移行・就労継続等幅広い領域で市民障害者とそのご家族をサポートする「刈谷市障害者支援センター」( http://kariya-syougaishien.com )を公設民営事業として継続運営を行い、「地域に開かれた精神科医療・福祉の場」として地域に幅広く知られています。

病棟機能の分化と集中

 病棟機能と病床数の変遷では、開設時の75床から2年後の、昭和40年の北病棟開設(186床)、昭和59年新病棟開設(276床)を病床数のピークに、平成11年B病棟開設(258床)、平成19年A病棟改築(248床)、平成24年新A病棟竣工(231床)、平成27年B2・B3病棟統合(207床)と、病棟機能の分化と同時に入院機能のダウンサイジング化を図り、地域医療を重視した病院運営を実践しています。
 現207床の内訳は、精神一般病棟122床(A4、B2病棟)、精神科救急病棟85床(A3、B1病棟)となっており、救急病棟のなかでもB1病棟(37床)は、認知症の周辺症状を中心に対応しています。
 当院の特徴の一つとしては、アルコール依存症治療、児童精神科外来などの専門性の高い診療に対応しており、一般病棟のA4病棟ではアルコールリハビリテーションプログラムを専門に実施、独自のクリニカルパスを用いた治療計画・管理を実践しており、将来的な急性期治療病棟への転化も視野に入れています。

主役は地域 ― 『ブースター・プロジェクト』の実践

 地域との関わりを進化させ、地域生活支援を具現化する取り組みが、平成15年に発足した地域医療福祉推進委員会、通称「ブースター・プロジェクト」です。ブースターというユニークなネーミングには、ロケットの補助推進装置=ブースターの意味がこめられています。ロケットの本体(主役)は地域であり、当院は飛び立つロケットを軌道に乗せる原動力(地域資源)の一つであるというスタンスを比喩したのがネーミングの由来となっています。
 このプロジェクトのけん引役を中心的に担ってきたのが当時の副院長で現理事長の平野千晶です。平野は、「プロジェクトの目的は、医療機関だけが地域生活支援の中枢を担うのではなく、行政機関や民間福祉事業者、支援団体の方々等とのネットワークを構築し、地域関係諸機関の連携で地域生活支援活動を行うことのきっかけとなる場づくりです」と話します。その背景には、当院が実施した利用者及びそのご家族を対象にした生活実態と福祉サービスのアンケート結果で浮き彫りとなった「障害者のご家族が抱える過剰な負担」があると言います。
 「ブースター・プロジェクト」では、ご家族の支援を一医療機関の機能だけで完遂することは事実上不可能と捉え、それぞれの機能の垣根を取り払った地域資源を広域から見出し、シンポジウムや各種勉強会等の開催による人材交流を通じた現状認識と情報共有、改善策の策定と実施を進めてきました。  当院の敷地内で開催される住民参加型のイベント「あったかハートまつり」もプロジェクトから派生したイベントで、すでに地域行事として定着した感があります。イベントでは企画立案から実施まで200〜300人の地域の団体や学校、ボランティアグループに参加協力していただいています。地域の子どもたちに楽しんでもらうことからも、コンサートや大道芸などを招くほか、刈谷市教育委員会の協力を仰ぎ子どもたちによる絵手紙コンテストを実施。コンテストでは、地元自治会や企業による表彰と賞品授与も行っています。10回目の今年は、2,000人以上の来場者で賑わい、精神科病院にはじめて足を運んだという方も少なくありませんでした。「主役は地域」のスタンスを徹底することで、地域の多くの方々との交流を通し、当院職員のコミュニケーションスキルの高まりを図ることで、医療サービスの質の向上にもつながっていると感じています。


掲載している情報は、取材時もしくは掲載時のものです。

【掲載】2015年10月23日