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MMSニュース No.90

(1)地域生活への移行支援による長期入院の解消

 長期入院の解消には、地域生活への移行支援や地域生活を支える医療の充実が不可欠です。平成20年度診療報酬改定では、精神科退院指導料の精神科地域移行支援加算や地域移行を推進する部門の設置が必要な入院基本料等の加算(精神科地域移行実施加算)が新設され、更に地域で生活する精神障害者を支援するため、精神科訪問看護・指導料(Ⅰ)の点数を引き上げるとともに算定回数の上限等が拡大されています。
 「今後の精神医療福祉のあり方等に関する検討会」の報告書では、以下のような在宅医療(訪問診療・訪問看護等)の充実・普及や精神科デイ・ケアの重点化等が示されています。そのため、平成22年度診療報酬改定では、「長期入院患者が円滑に地域移行するための更なる支援や障害福祉サービスの充実を踏まえ、精神科デイ・ケア等の診療報酬上の評価」が検討されています。

図1「精神保健医療福祉の更なる改革に向けて」概要
(2)患者の病態や治療内容に応じた評価

 精神科における治療は、①抗精神病薬、抗うつ薬、抗不安薬等の向精神薬による薬物療法等の身体療法と、②支持的精神療法、認知行動療法等の精神療法、社会生活技能訓練(SST)等の心理社会的療法に区分されます。
 認知行動療法等の精神療法は、薬物療法とともに精神科における治療法としては重要です。ところが、平成17年度厚生労働研究「精神療法の実施方法と有効性に関する研究」では、精神科における精神療法の実施状況(医療機関の自己評価)が十分でない施設は37.9%と報告されています。つまり、精神療法の実践のために技術を習得する方法が必ずしも明確でないなど、普及が進んでいない現状があります。
 また、日本での統合失調症患者に対する抗精神病薬の併用投与に関して、日本は諸外国と比して2剤、3剤以上という多剤投与が多く、抗精神病薬の多剤・大量投与は単剤投与と比較した有効性が明らかでないない一方で、副作用のリスクが高まるとされています。 精神科の入院医療では、同一病棟であっても様々な状態像の患者が入院しており、個々の患者の精神症状等の状態像やケアに要する手間等による評価体系となっていない状況となっています。
 現行の診療報酬上の評価としては、精神科関連の4つの特定入院料(精神科救急入院料、精神科救急・合併症入院料、精神科急性期治療病棟入院料、精神療養病棟入院料)を算定している統合失調症の患者に対して非定型抗精神病薬で治療を行った場合を評価した特定抗精神病薬治療管理加算(10点)や、長期療養が必要な精神障害者が入院する病棟として精神療養病棟入院料が設定されています。
 平成20年度診療報酬改定では、通院・在宅精神療法の算定要件の見直しと病院と診療所の評価の格差を是正し、児童・思春期精神科入院医学管理加算の点数引上げと治療室単位で算定ができるよう算定要件が緩和されました。
 「今後の精神医療福祉のあり方等に関する検討会」の報告書では、「精神医療の質の向上」の項目において、統合失調症に対する抗精神病薬の単剤投与や切り替え・減量といった改善を促す評価の方法等の検討が示されています。
 そのため、平成22年度診療報酬改定では、論点として「薬物治療と比較しても効果が明らかな認知行動療法等や、患者の病態に応じた抗精神病薬の適切な選択(統合失調症患者に対する単剤処方等)、患者の病態像児童・思春期の発達障害、長期療養が必要な患者等)に応じた入院医療の診療報酬上の評価」が示され検討が行われています。

(3)急性期医療の評価

 精神科救急と一般救急との連携が重要であるが、緊急搬送においても精神疾患を有する患者の医療機関への受け入れ体制や精神・身体合併症に対応する機能を更に確保していくことが課題となっています。精神・身体合併症への診療機能等の総合的な機能を有する総合病院の精神科等は、精神科医の不足等により、施設数、病床数ともに減少しています。
 新規入院患者や急性増悪した患者の治療病棟として精神科急性期治療病棟が設定されていますが、「全病床数の7割以上が精神病床の病院もしくは特定機能病院」の施設基準があるため、いわゆる総合病院の精神病棟(特定機能病院を除く)では算定することができません。
 そのため、平成20年度診療報酬改定では、いわゆる総合病院等における精神科救急医療(身体合併症治療を含む)を適切に評価するための精神科救急・合併症入院料や、身体疾患への治療体制を確保している精神科病院等を評価する精神科身体合併症加算(入院基本料等加算)が新設されました。
 また、精神科救急医療施設の整備状況の地域差の解消や、入院早期からの在宅への移行支援を更に推進するため、精神科救急入院料の算定要件を緩和し、在宅移行率の高い施設の評価が平成20年度改定で引上げられました。
 「今後の精神医療福祉のあり方等に関する検討会」の報告書では、救急・急性期医療の確保や身体合併症への対応強化、「総合病院精神科」の機能強化等が示されています。
 そのため、平成22年度診療報酬改定では、論点として「救急搬送の受け入れ体制の確保が課題となっている精神科救急精神・身体合併症への総合的な機能を有する病床に対する診療報酬上の評価」が示され検討が行われています。

掲載している情報は、取材時もしくは掲載時のものです。

【掲載】2010年01月22日