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戦略的病医院広報誌のつくり方
〜コミュニケーション及び情報発信の「核」として位置づける


広報は双方向のキャッチボール、広報誌は
配布して「何をするのか?」をまず考える

―― 病医院広報の基本的な考え方からお話し下さい。
石田・ 私はいつも広報活動をキャッチボールに例えるのですが、ボールが情報とすれば、常に相手に合わせて分かりやすい情報を投げることが広報の基本です。また投げるだけでなく、ボールを受けて投げ返すということの繰り返しで、お互いの理解は深まっていきます。つまり広告はどちらかと言うと一方通行的ですが、広報は双方向のコミュニケーションです。ボールを健康な若者に投げるのか、それとも子供や高齢者に投げるのかによって、構えや立ち位置を変えなければならない。そこに戦略が必要になってくるわけです。

―― 病医院の広報誌はコミュニケーションツールの一つだと思いますが、インターネット等にない紙媒体の特色はどこにあると思われますか?
石田・ 紙媒体の最大のメリットは何時でも読みたい時に、読めることに尽きます。インターネットは確かに検索には便利ですが、必要な情報にたどり着いてからは、私たちもプリント・アウトして読むほうが楽なのですね。常にコンピュータを携帯して、画面を見るのを負担に感じる人も多いと思います。

―― ゼロから院外広報誌を制作する場合に、留意すべき点を教えて下さい。
石田・ 広報誌を「作ること」が目的化してはいけない。配布の方法を何も考えずに作ってしまって、受付やブースに置いておくだけの受け身的な姿勢では、かなりの部数が余ってしまうことにもなりかねません。例えば病院が定期的に、健康や医療をテーマにした講演会を開催して、講演会の内容と連動した記事を掲載し、そこで一定部数を配布するとか、予め配布使途を明確にした上で制作することが大事です。広報誌を使って「何をやるのか?」をまず考えて頂きたい。完成した段階でスタッフの自己満足で終わっては、何の意味もありません。
 地方都市のある中核病院では、広報誌が出来上がると病院と近接する商店街の各店に一定部数配布し、それが習慣化して商店街の春夏秋冬の行事にもなっているのです。買い物客から、「広報誌はまだ出来ないの?」と督促されるお店もあるようです。正にこれが“地域密着”という視点からの戦略だと思うのです。こうした配布方法だと、商店街のお店情報やグルメマップを掲載する等の、企画にもつながっていきます。誰が読んでいるのかが明確であれば、読者に合わせた記事構成が検討できるわけです。

広報に興味のある有志で結集しよう!
広報マインドを全職員が共有し盛り上げる

―― 貴法人の調査によると、会員医療機関の「広報活動・広聴活動」の年間予算は500万円以上と100万円未満が最も拮抗する等(図6)、医療施設によってかなりのバラツキがあるように感じます。広報に関わるスタッフ(図7)も4名未満という施設が殆どで、1名だけで対応しているのも22施設もあります。制作コストや院内体制にもよるかと思いますが、広報誌の制作を内製にするのか、それとも外注化が良いのか、ご意見を聞かせて下さい。

石田・病院の方針に左右されますので一概には言えませんが、広報誌制作の一つの目的として、職員の人材育成のためという見方もできるのです。広報や雑誌編集の専門家が病院にいれば別ですが、そういうケースは稀でしょう。職員に編集制作を教える人材がいないので、最初の段階で外部の編集プロダクションやフリー編集者等の協力を得ながら、病院の広報委員会のメンバー達と一緒に作っていく。まず外部に道筋をつけてもらい、病院職員が成長し自立して広報誌を作れる時期が来た段階で、徐々に内製へと切り換えていけば良いのではないでしょうか。その場合に、何時ごろを目途に内製に移行するのかのロードマップを描き、計画的に進めるのが良いでしょう。一方で広報誌制作を管理・指導するスタッフがいないので、外部のプロダクションに任せきりにしたところ、外注先に振り回されてコストばかりかかり、良いものが出来なかったケースもあり、信頼できる外注先の選択も慎重に行うべきでしょう。

―― 一般企業のように専従の広報担当者を置いている医療施設は少ないので、広報誌編集に携わるスタッフは各部署から選抜された広報委員会や、編集委員会等のメンバーが行うことになると思います。ただ皆、他に仕事を持っているので、片手間でやるのは大変だという意見もあります。
石田・ 経験的に言うと医療専門職でも、クリエイティブな仕事に興味がある人もおられるのです。トップダウンで各部署のバランスを取って召集がかかり、望んでもいない職員が広報委員会のメンバーに入り、編集会議に参加してもユニークな企画は出てこないでしょう。部署に拘らず、広報誌の制作や広報活動に興味のある人達が自発的に手を挙げて有志で集まり、リーダーを決めてクラブ活動のような感覚で進めていく方が良い結果が生まれると考えます。一定規模の病院には多くの職員が勤務していますから、取材や原稿執筆、写真撮影やイラストを描くのが好きな人は必ずいる筈です。実際に委員会形式ではメンバーの集まりが悪くて、広報委員会を廃止した病院も私は数多く見てきています。
 実際に広報活動とはチーム・アプローチですし、広報マインドを広報担当者だけでなく全ての職員が共有することが一番、大事です。情報に関心の高い職員が多ければ多いほど、広報活動は盛り上がっていくものです。

掲載している情報は、取材時もしくは掲載時のものです。

【掲載】2014年08月22日