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(事例研究レポート)人材開発イノベーション
  〜「医療の質」向上につなげる教育・研修技法

[ケース1] MOT(技術経営)改革で、顧客に「感動を与える」サービス

 最初は病院を支えるミドル(中間管理職)層に対する独自の研修会を継続的に実施し、実際の病院改革や経営改善に成果をもたらした事例だ。
 MOT(Management of Technology― 技術経営)とは「大学や企業で開発された技術を、実際の社会に役立つようにサービスや商品企画に生かして、競争力を高める」経営手法。多くの企業が現実に導入し成果を上げているものだ。
 地方都市A病院のU理事長はMOTを専門とする大学教授の講演を聴き、「人間力と技術力の融合で組織を革新し、顧客に“感動を与える”サービスを提供出来る」という考え方に共鳴し、実際の病院の経営改革に生かせないかと考えた。
 数年前にMOT改革の実際の導入を踏まえた研修会を開催し、病院各部門の役職者100名近くが参加した。MOTを専門とするその大学教授に基調講演をお願いし、終了後にグループワークを行って、病院の現在抱える課題や具体的な改善提案に関して、各々が自由に意見やアイデアを述べる機会を設けた。
 MOT改革の眼目となるのは、大学教授の提唱する『四画面思考』という考え方で、感動をもたらす「人間主義」と利益を生む「経済主義」の2つのベクトルを両立。理想の“ありたい姿”を創造するため、実現可能な“なりたい姿”(目標)を設定し、“現状の姿”(現状分析)とのギャップを解消するため、“実践する姿”(事業計画)を継続的に遂行して、期待される事業体へと生まれ変わろうとするものだ。“実践する姿”とは病院職員自らの「行動化」とも言い換えることが可能だろう。
 これまでに何度も研修会を実施し、参加者からの提案に基づいて実施された改革は数え切れない。その幾つかを上げると、「患者の実情に合った病棟再編」や「DPC導入」、「7対1入院基本料の届出」、「患者の安心窓口ワンストップ化」、「経営管理部門のワンストップ化」等の病院経営に関することにとどまらず、医療サービス面でも「禁煙外来」、「周産期・女性医療センター」の開設等、新機軸が目白押しだ。
 同研修会の中では「経営の質」向上に関しても言及され、「節約と増収による黒字化」が参加者全員で共有され、職員からの提案に基づく業務の効率化やコスト削減策を実行した結果、3年前の決算から経常収支黒字化を達成した。
 A病院の場合は「人間力を鍛える」ことと「経営改善」の両立を、同じプロセスで実現した数少ない事例の一つと言えるだろう。病院の中間層が研修で取り組んだことが、実際の病院運営に生かされ、具体的な成果として結実すると、自分達も病院経営に貢献したとの思いが共有でき、組織の活性化にもつながっていく。こうした好循環は、正に人材開発の「王道」かもしれない。一般企業・病院双方に言えることだが、斬新な経営理論や手法を導入・実践したとしても、職員の意識は何も変わらず業績にも繋がらなかったというケースは山ほどある。先進的な経営手法を具体的な成果に結び付けるには、経営トップの「意思」と「実行力」の“強度”に左右されることは間違いなさそうだ。

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【掲載】2013年09月20日