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[事例研究レポート]在宅医療の地殻変動
  〜「在宅」も機能分化と連携の時代に

訪問診療・看護・介護が三位一体 看護師の強力なサポートで医師の負担軽減

 次に円滑な「医療と介護の連携」によって、地域医療の拠点として在宅医療を積極的に展開する在支診の活動を紹介する。大阪市生野区の(医)菜の花会・菜の花診療所は、1992年の開設当初から“出かける医療”を掲げた地域医療活動を展開してきた。
 山寺慎一院長は国立病院東京医療センターの総合診療科で「間口の広い」医療を経験した後、03年に現職に就任。総合内科を専門とするドクターだ。  同院長は毎日、午前中の外来の後、午後2時頃から訪問診療に注力する。在宅医療は山寺院長が専任で、学会等で不在の場合は非常勤医師に夜間対応をお願いすることもあるが、そうしたケースは必ずしも多くはない。医師一人体制で在宅医療の積極展開が可能なのは、手厚い陣容の訪問看護師による万全のバックアップ体制が備わっているからだ。
 常勤4名、非常勤3名の熟練した訪問看護師が、山寺院長とのスムーズな連携により、24時間体制での迅速な対応を可能にしている。また診療所と隣接した有限会社菜の花がケアプランセンターやヘルパーステーションを運営し、訪問診療・看護・介護が三位一体で医療・介護サービスを提供する体制を整えている。
 山寺院長は「訪問看護との緊密な連携体制がなければ、病院から移行する重症患者の在宅支援は困難だと思います。在宅患者に異常が出た場合でも、看護師が先手を打って状態を把握し、正確な患者情報が直に伝えられます。合同カンファレンスや看護師のアセスメント、観察記録を見るだけでも精度の高い情報が得られますし、医師の負担も軽減されます」と、訪問看護師との連携のメリットを強調する。
 在宅医療のエリアは半径2km以内で、在宅患者は常時70名以上。訪問診療の頻度は患者の状態によって異なるが、月120件前後、訪問看護は200件を超える。同診療所の2010年1年間のデータでは、在宅での看取りが15件、病院で亡くなられた方が13件と、ほぼ拮抗した数字。在宅患者の内訳もがん患者だけでなく、神経難病、脳卒中、認知症等、偏りがない。外来患者が加齢や病気の発症で、移行するケースが多く、在宅患者の約半数を占める。終末期のがん患者や通院が困難な独居の重症患者は、大半が病院からの紹介だ。 訪問看護や介護事業を統括するのは、ケアマネジャーでスーパーバイザー兼看護師長の岡崎和佳子さん。同診療所開設当初からのメンバーである。
 岡崎さんは「小規模診療所が在宅医療を効果的に進めていくには、看護師に責任を与えて主体的に関与出来る体制を整えることが重要です。当診療所の場合は、週に2回、院長、看護師、ケアマネジャー、ホームヘルパー等、全事業のスタッフが一同に介して、カンファレンスを実施しています」と話す。職種間のヒエラルキーは一切廃して、院長、看護師長、看護師、ホームヘルパーらが同じテーブルに着き、同じ目線で活発に議論を行う組織風土が醸成されていることが、同診療所の特徴と言える。

(医療ジャーナリスト:冨井 淑夫)

(注)紹介した南国中央病院は2011年11月、菜の花診療所は同年4月に取材した時点の情報です。スタッフ数やデータに関しては、現在では変化している可能性があります。

(図表1)在宅療養支援診療所・病院の施設数の推移
(図表2)在支診・在支病の点数比較

掲載している情報は、取材時もしくは掲載時のものです。

【掲載】2012年12月21日