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薬機法(医薬品、医療機器等法)改正で調剤薬局現場はどう変わる?
~2タイプの機能別薬局が誕生

医療ジャーナリスト:冨井 淑夫

薬機法改正により、調剤薬局の新しいカタチとして、“地域連携薬局”と“専門医療機関連携薬局”という2タイプの機能別薬局が誕生しました。
この2つの連携薬局の今後の動向について、医療経営ジャーナリストの冨井淑夫氏にご紹介いただいています。

薬局経営の今後に大きな影響及ぼす改正案

 2019年11月27日、「医薬品医療機器等法」(薬機法)改正案が参議院本会議で可決・成立し、同年12月4日に公布された。薬機法の一部を改正する法律案が厚生労働省より国会に提出されたのが同年3月19日の通常国会(第198回)だったから、成立までに8か月以上を要したことになる。
遡ると厚生労働省は2019年1月、自民党厚生労働部会(当時・小泉進次郎部会長)で通常国会(第198回)に提出する「薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性確保等に関する法律等の一部を改正する法律案)改正」の提出時期を3月上旬とするスケジュールを提示。その後、3月7日に同部会「薬事に関する小委員会合同会議」が開催され、委員の一部からは内容についての異議が出たものの同改正案は、小泉部会長の一任で了承された。

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案の概要

 出典:厚生労働省「中央社会保険医療協議会総会」(令和元年12月20日)資料総―3をもとに作成
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212500_00059.html

 その後、前述・3月19日に提出された薬機法改正案・概要は①医薬品、医療機器等をより安全・迅速・効率的に提供するための開発から市販までの制度改善②住み慣れた地域で患者が安心して医薬品を使うことが出来るようにするための薬剤師・薬局のあり方の見直し③信頼確保のための法令遵守体制等の整備④その他――からなる。

 ④その他――では1・「医薬品等の安全性の確保や危害の発生防止等に関する施策の実施状況を評価・監視する医薬品等行政評価・監視委員会の設置」2・「科学技術の発展等を踏まえた採血の制限の緩和」――等が織り込まれていた。改正案には今後の調剤薬局のあり方や、薬局経営に大きな影響を及ぼすと思われる重要な内容が数多く、織りこまれている。

 今回の薬機法改正で特に重視されているのは、①薬剤の服用期間中の継続的なフォローアップ②新たな薬局機能の創設③コンプライアンス(法令遵守)―の三点だ。

「信頼回復のために」の意味するもの

 同改正案・概要の三番目に「信頼確保のための法令遵守体制の整備」の中には具体的に、許可事業者に対する「業務監督体制の整備、経営陣と現場責任者の責任の明確化等の義務付け」や「虚偽・誇大広告による医薬品等の販売に対する課徴金制度の創設」等についての記述があるのに注目したい。

 そして、厚生科学審議会・同改正案取りまとめの中に、こんな記述がある。「調剤薬局企業は適正利益水準であるのかの確認が必要。実態調査では薬局単位ではなく、法人全体で評価すべきであり、調剤薬局企業の経営状況については、法人単位の損益計算書、貸借対照表及び平均給与や従業員数等の詳細な情報を薬局事業のセグメント情報としてだけではなく、調剤薬局事業に限定して情報開示する必要がある」、「調剤薬局企業は営利企業であるが、わが国の公的医療保険下でのプレイヤーでもある。従って、例えば薬局企業の役員報酬であるとか、内部留保であるとか、配当金等が適正利益水準であるのかを検討する必要があるのではないか。」これらが、何を意味するのかと言うと、国は官製市場であるにも係わらず、多くの調剤薬局ではビジネス・コンプライアンスやガバナンス、特に経営の透明性等については多くの問題を抱えており、早急な改善が必要であるとの趣旨だ。前出・自民党厚生労働部会のメンバーの一部から、同改正案に異議が示されたのも特にこの部分であった。株式会社であり営利企業である調剤薬局の経営に行政が過剰に介入することに対し、疑義を示した委員も少なからず存在した。

 しかし、同法では「法令遵守上、問題を起こした責任役員の交代」や「虚偽・誇大広告の判明した企業に課す課徴金は、対象期間中の売上額の4.5%とする」こと等の規定が法令上、明記されることになった。

 その前提となる概要の三番目の最初に「信頼回復のための」との記述がある。これは一体、何を意味するのだろうか?

 それは恐らく、1990 年代以降のバブル経済崩壊後に発覚した、他業種での相次いだ不祥事がきっかけではないかと考える。これはちょうど昭和から平成へと移行した時代でもあり、日本企業の競争力が総じて低下した「失われた20 年」とも称された時期に当たる。

 令和の時代を迎え、調剤薬局にとっての「失われた時代」がやって来るのか?それは、調剤薬局企業・個々の信頼回復への経営努力に委ねられているのは間違いないだろう。

がんに係る認定薬剤師等がカギを握る「専門医療機関連携薬局」

特定の機能を有する薬局の認定

 出典:厚生労働省「2040年度を展望し誰もがより長く元気に活躍できる社会の実現に向けて」(平成31年4月10日)をもとに作成
https://www.mhlw.go.jp/content/10807000/000510963.pdf

 同法改正により調剤薬局の新しいカタチとして、①「地域連携薬局」と②「専門医療機関連携薬局」という2タイプの新しい機能別薬局「知事認定制度」(名称独占)が誕生する。これは、調剤薬局の業態を大きく変えていこうとするもので、患者自身が自発的に「薬局を選択する」ことを促すという点で非常に注目される。①は「地域において、在宅医療への対応や入退院時を始めとする他の医療機関、薬局等との服薬情報の一元化・継続的な情報連携において主体的な役割を果たす薬局」。②は「がん等の薬物療法を受けている患者に対し、医療機関との連携を密に行いつつ高い専門性に基づき、より丁寧な薬学的管理や特殊な調剤に対応出来る薬局」の2つに集約される。

 で示された「在宅医療への対応」や「医療機関・他薬局との服薬状況の一元化・継続的な情報連携」等の記述からは、現在の「かかりつけ薬局」の機能とも通底しており、更に進化した役割が期待される薬局であることが、何となくイメージされる。に関しては、近年、がん患者等の外来での抗がん剤処方等が増えるようになったことから、がん患者等への専門性の高い服薬指導や薬学的管理、患者教育等も行える体制の備わった薬局を都道府県で認定していく方向性が示されたわけだ。

 大手調剤薬局グループの事業部長(薬剤師)は「近年、薬局薬剤師の中にも日本臨床腫瘍薬学会の認定する“外来がん治療認定薬剤師”(以下、同認定薬剤師)資格取得を目指す人が現れてきた。病院薬剤師と比べると数は少ないものの厚生労働省の『患者のための薬局ビジョン』には、高度薬学的管理機能として“学会等が提供する専門的薬剤師の認定等を受けた、高度な知識・技術と臨床経験を有する薬剤師を配置”との記述がある。を目指すには、同認定薬剤師の配置等がカギを握るのではないだろうか?」との見方を示す。

 2018年4月時点の同認定薬剤師の資格取得者は全国で639人。うち薬局薬剤師は36名に過ぎず、まだまだ足りない。近い将来、調剤報酬改定で仮にと連動した加算評価等が新設された場合、届出要件に「同認定薬剤師の配置」等が求められたとしても、現状のマンパワーでは不可能だ。ただ、組織力のある大手調剤薬局チェーン等では、現場の薬剤師に当該資格や日本緩和医療薬学会の認定する「緩和薬物療法認定薬剤師」等も含めてがん患者等に係る認定資格を取得させる動きが活発化してきた。当該チェーンの薬局が早期にの認定を受けるための「布石」と見えなくもないのだ。

自治体の“お墨付き”により「選ばれる」機能別薬局

特定の機能を有する薬局の認定要件及び手続

 出典:厚生労働省「2040年度を展望し誰もがより長く元気に活躍できる社会の実現に向けて」(平成31年4月10日)をもとに作成
https://www.mhlw.go.jp/content/10807000/000510963.pdf

 さて、2タイプの機能別薬局の現在、示されている認定要件として「プライバシーに配慮した相談スペース、地域における休日・夜間対応(輪番制)」、「入退院時の医療機関との情報共有等の連携体制」、「在宅訪問の実施」、「麻薬調剤の対応」、「無菌調剤室設備」(共同利用も可)、「一定の研修を受講した薬剤師の配置」等になる。に関しては、「プライバシーが確保された個室」、「地域需要に応じた特殊な薬剤等の確保」、「専門性の高い薬剤師の配置」、「医療機関・薬局との密な連携体制の整備及び研修の実施」等が織りこまれている。筆者の私見ではあるが、①②の何れも「かかりつけ薬局」の機能を満たすことが、最低限、求められていくのではないだろうか?

 地域包括ケア・システムの先駆的な取り組みで知られる滋賀県東近江市・永源寺地区の丸山薬局代表取締役・大石和美氏(プライマリ・ケア認定薬剤師)は昨年、筆者の取材に応えて「地域連携薬局は当薬局が取り組んできた役割を体現しており、ぜひ認定を目指したい」との考えを示し、「地域包括ケア・システムは医療・福祉だけでなく、地域支援に貢献する企業等も含めて“丸ごとケア”という発想が大事。薬局は地域の人びとと社会資源を繋げ、地域の産業を育て、地元を活性化するハブの役割も果たせる筈」と語っている。

 について国は正に、前述のような役割を期待していると思われるが、に関しては将来的にがんやエイズ(HIV感染症)だけでなく、薬局機能として糖尿病「専門医療機関連携薬局」等のような形の専門分化が進められる可能性も想定される。①②の何れも名称表示が可能であり、更新は1年毎に行われる。これら機能別薬局は各都道府県で動き出した「薬局機能情報提供制度」と連動し、各自治体のホームページに掲載され、市民が「選択し易い」ように情報開示される。医療機関広報に詳しい日本HIS研究センター代表理事・石田章一氏は次のように指摘する。「調剤薬局経営の観点からは、行政からの“お墨付き”を得られるということ。各地域の薬薬連携(薬局間の連携)は従来は医療機関の薬剤師と薬局薬剤師との間で推し進められてきたが、これからは高度薬学的管理機能を持つ各地域の薬局・薬剤師が都道府県の後押しにより、自薬局の機能を広報し、病院等の薬剤師と緊密に連携しながら、協働で高度薬学的管理や特殊な調剤業務にも対応する流れが構築されていく。」現在、2種類の機能別薬局は地域でブランド化し、住民・患者、医療機関等から「選ばれる」薬局になると言うのだ。

医薬品業界で注目される「先駆け審査指定制度」の法制化

 同法では「患者の薬剤使用に係る情報を他の医療機関の医師等に提出する」ことや、「調剤時に限らず必要に応じて、患者の薬剤の使用状況の把握や服薬指導を行って、それを記録として残す」ことを明記し、義務付けられたのは重要な改正ポイントだ。某大学病院に勤務する薬剤師は「薬剤師法では情報提供や薬学的知見に基づく指導が“調剤時”と規定されていたが、同法改正により服用期間中においても服薬アドヒアランスや副作用の有無等を確認し記録に残すことが要求される。加えて、薬剤師が情報提供する努力義務も薬機法で初めて規定されたことは、“服薬業務の質”向上の視点から画期的」と評価する。

 さて、本稿ではスペースの関係から機能別薬局等、調剤薬局・医薬分業に係るポイントに絞り言及させて頂いた。勿論、改正薬機法は調剤薬局だけでなく、医薬品・医療機器メーカー・卸企業、OTC薬局等、医薬品・医療機器等を扱う、あらゆる事業者のビジネスに影響を与える法律であるのは言うまでもない。今回、未承認薬等に対する「先駆け審査指定制度」や「条件付き早期承認制度」が法制化されたことは、医薬品関連企業等にとって、最も重要なトピックの一つであることは指摘しておきたい。加えて、添付文書情報の提供も原則、電子化することも決定された。

 同法改正の調剤薬局に係るもう一つの大きな柱である「遠隔(オンライン)服薬指導」解禁については、2020年調剤報酬改定の内容を見据えながら、本稿とは別途、テーマを設けてさせていただく。

掲載している情報は、取材時もしくは掲載時のものです。
【掲載】2020年09月04日