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オンライン服薬指導 解禁へ!
~課題山積の中で「外来」「在宅」・2種類の調剤報酬が誕生

医療ジャーナリスト:冨井 淑夫

オンライン(遠隔)服薬指導が、2019年12月4日の薬機法公布から1年以内に解禁されます。
ここではすでに、国家戦略特別区で実証実験に参加した保険薬局での取り組みを交えながら、オンライン服薬指導の実情と課題について、ご紹介します。

実証実験でのエビデンス乏しい中で、オンラインの報酬新設

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案の概要

 出典:厚生労働省「中央社会保険医療協議会総会」(令和元年12月20日)資料総‐3をもとに作成
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212500_00059.html

 今年4月に施行される「医薬品医療機器等法」(薬機法)改正の大きな目玉として位置づけられたのは、「服薬指導について、対面義務の例外として、一定のルールの下で、テレビ電話等による服薬指導を規定」としたオンライン(遠隔)服薬指導の解禁だ。パソコンやスマホを使って薬剤師が離れた場所から服薬指導を実施するオンライン服薬指導(以下、同服薬指導に略)は、2018年改定から幾つかの診療報酬項目新設が実現した「オンライン診療」と同様、成長戦略の実現を目指し、内閣府主導による「未来投資戦略2018」等の経済政策が先行。医療政策というよりは、経済成長を主眼に推進されてきた施策の一つだ。オンライン診療は「対面診療の原則の下に、有効性や安全性等への配慮を含む一定の要件を満たすことを前提に、情報通信機器を用いた診察や、外来・在宅での医学管理を行った場合」に診療報酬評価される。こうした時代の流れから、2019年12月4日の薬機法公布から1年以内にオンライン服薬指導は解禁される。

オンラインによる服薬指導(特区の概要)

 出典:厚生労働省「厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会」(平成30年11月22日)資料2をもとに作成
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02430.html

 オンライン服薬指導は、薬機法改正に先駆け「国家戦略特区法」に基づき、薬剤師の対面による服薬指導義務の特例として、国家戦略特区内に限定して既に解禁。2018年6月14日の国家戦略特別区諮問会議において愛知県、兵庫県養父市、及び福岡市の3自治体において、同服薬指導の実証実験がスタートした経緯がある。

 ただ、2019年3月31日時点での当該3戦略特区全体の登録薬局数は28件、実施患者数は僅か9名に留まっていた。厚生労働省は、これら特区の3自治体では登録薬局に対して、「適切なお薬手帳の活用や、患者への指導・情報提供」等を評価する「薬剤服用歴管理指導料」算定を特例的に認めていた。但し、オンラインでは、かかりつけ薬剤師に求められる「薬剤師の患者の居住地への訪問」が容易ではないとして、当該特区での「かかりつけ薬剤師指導料・同包括管理料」算定は認めなかった。但し、2018年末に公表された薬機法改正案の“取りまとめ”の中には本部会等での指摘を踏まえて「遠隔服薬指導はかかりつけ薬剤師に限定すべき」との文言がある。これは矛盾しており整合性が取れない。

 前述したように政府“肝いり”の経済政策から出発した制度であり、特区の実証実験におけるエビデンスが乏しい中で、拙速に制度設計が進められ、(後述するが)2020年診療報酬改定では、同服薬指導に係る2種類の調剤報酬が誕生した。オンライン服薬指導は、「本当にユーザー目線で、進められたのか?」との疑問もあるが、筆者が昨年、9月に取材した前出・3戦略特区の一つで、実証実験に参加した保険薬局の取り組みを紹介したい。仮にS薬局とさせて頂く。

在宅テレワーク導入により 薬局薬剤師の「働き方改革」推進

 S薬局の所在地・自治体は元々、当該医師会と協力してオンライン診療の実証実験を進めてきたが、その流れの中で国家戦略特区内のオンライン服薬指導の前出・実証実験にも手を上げた。当該自治体は同実証実験の登録薬局として、「小学校区内で他に薬局の存在しない地域の薬局」を前提とし、S薬局はその条件に該当していた。S薬局は、この地域でオンライン診療の実証実験に参加し訪問診療に注力する診療所と有機的に連携、「在宅訪問」による服薬指導を積極的に行ってきた実績がある。同服薬指導を利用する患者は2名で、何れも当該診療所で「オンライン在宅管理料」を算定する在宅患者。月2回の訪問診療のうち1回をオンライン診療に切り替えたが、S薬局の訪問薬剤管理指導も月2回のうち1回を「対面」、もう1回をオンラインに移行した。2名の在宅患者は高齢で、自宅から薬局まで車で30分程かかることから、費用のかかる介護タクシーの利用や、多忙な家族が代行して来局、薬を受領してもらうことに、心苦しさを感じていた。利便性と経済面の両面から、患者側は積極的にオンラインを選択した。当初、薬局はスマホを利用して同服薬指導を行っていたが、現在はコンピュータ画面で服薬指導を実施。在宅患者はスマホの画面上で指導を受ける。

 薬剤師は調剤室からコンピュータを操作。スマホ画面上には、薬剤師の画像が鮮明に映し出され、処方される薬剤の説明文書等も分かり易く表示される。テレビ電話と同様のやり取りにより、患者は丁寧な指導や説明を受けることが可能に。基本的に薬剤師側から患者と連絡を取り、予約を入れるが、オンライン上では患者側からは薬局に、連絡を取るのは出来ない仕組み。昨年、9月時点で、オンラインによる服薬指導を希望したのは、当該2名の患者に限られた。

 9月の取材段階では薬局現場での運用ルールが明確でなかったことから、実証実験では課題も表出していた。例えば、実証実験ではスマホ機器、更にオンラインのやり取りに必要なソフトに関し、協力メーカー側から無償貸与されていたが、実証事業が終了してから、どうなるのかは、はっきりしていなかった。

 仮に薬局側が購入し、患者に提供してオンラインを自らが働きかけると、“利益誘導”に繋がる恐れがあるから、それは出来ない。

 もう一つは、「在宅」高齢患者等の場合、処方薬を受領するのが難しいケース。患者家族の代行や薬局が配達可能な場合等を除くと、業者を使った「配送」のケースが増えると予想される、しかし、薬の配送には温度管理等、品質管理のノウハウが必要だ。当時、当該薬局長は、大手運送会社の宅急便等を利用するのには安全管理上、不安を感じていた。クール宅急便等を利用すると、患者の経済的負担が重く、仮に薬局スタッフが配達するにせよ、遠方の場合、それなりの配達料を患者から徴収しなければ、採算が取れないことを指摘していた。高い調剤報酬が設定されれば別だが、現状の「オンライン診療料」等の低い評価(2018年改定時・70点)を見ると、まずは期待薄だ。加えて、患者の自己負担増を招くと、患者からはオンラインの利用を敬遠されてしまう。

 円滑な運用に向けて課題が多く残されているとは言え、当該薬局の薬局長は、慢性的な薬剤師の人手不足の時代に、薬局現場における同服薬指導の導入には大いに期待を寄せ、次のように話してくれた。

 「今後、わが国で高齢患者が急増する時代を迎えて、“在宅”での診療や服薬指導を必要とする患者数は激増していく。それに比して、将来、訪問薬剤師の絶対数は、全国的に不足するのは間違いない。薬剤師の在宅“訪問”2回のうち1回を“オンライン”に切り替えることが出来れば、一人の薬剤師が遥かに多くの在宅患者への対応が可能になる。現在は薬局からのオンラインしか認められていないが、今後、同服薬指導が普及し、将来的に規制緩和で薬剤師の自宅からの“オンライン”指導が実現出来れば、子育てや介護等の事情で通常勤務の難しい薬剤師も、仕事を継続することが出来る。薬剤師の職能を十分に発揮できる形の“働き方改革”が可能になる。」

 患者との「対面」によるケアが欠かせないため、一般的に医療専門職の在宅テレワーク導入は難しいとされてきたが、医療機関に先行し薬局薬剤師が在宅テレワーク導入の“突破口”となり得るのかもしれない。

機器導入・薬剤配送費用は「社会通念上、妥当な額の実費徴収」可能に

今後実施可能となるオンライン服薬指導(概要)

 出典:厚生労働省「中央社会保険医療協議会総会」(令和元年12月20日)資料総‐3をもとに作成
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212500_00059.html

 それでは、前述・2020年診療報酬で誕生した2つの調剤報酬を見ていくことにしよう。同服薬指導は2019年12月4日の薬機法公布後、1年以内に解禁され、保険薬局での実施が可能になる。それを受けて、中医協(中央社会保険医療協議会)等での議論から予想されたように「外来」と「在宅」でのオンライン服薬指導に係る調剤報酬新設が実現した。前者は現行の「薬剤服用歴管理指導料」〔以下、同指導料に略〕に「オンライン服薬指導を行った場合」(月1回・43点)の評価。同指導料算定に係る業務をオンラインで行うのが前提だ。確かに、前出3ヶ所の国家戦略特区内で先駆けて実施されていた同服薬指導の実証実験でも、モデル事業に参加する薬局が要件を満たしていた場合は、同指導料算定は認められており、その制度の立て付けは理解出来るのだが、同指導料の“別枠”として外来のオンラインが報酬評価されたのは、全くの“想定外”だった。原則、3か月以内に同指導料1または2を算定した患者のみが対象だ。

 後者の「在宅」での同服薬指導に係る評価は、「在宅患者訪問薬剤管理指導料 在宅患者オンライン服薬指導料」(月1回・57点)。両者とも「情報通信機器を用いた服薬指導を行うにつき、十分な体制が整備されている」のが条件。「外来」と「在宅」の患者に限定して診療報酬で評価するのは、2018年改定で新設された医療機関のオンライン診療に係る診療報酬と通底する。何れも、同服薬指導は「当該保険薬局内で実施する」、「患者の同意の下に“対面”による服薬指導と組み合わせて行う」のが前提で、「月1回の算定」しか認められない。算定要件は何れもかなり詳細に設定されているので、改めて診療報酬点数表を確認して頂きたい。懸念となっていた薬剤の配送費については、2019年10月の中医協総会で、「必ず患者の医薬品受領の確認を行う」ことを条件に、「費用徴収が可能」であることが了承。そして、2020年1月31日開催の中医協総会で公表された「個別項目について」の中の同服薬指導に係る診療報酬要件で、「情報通信機器の運用に要する費用及び医薬品を患者に配送する際に要する費用は、療養の給付と直接、関係のないサービス等の費用として、社会通念上、妥当な額の実費を別途徴収出来る」との記述があり、薬局の当該費用徴収が公に認められた。

 しかし、現実的に導入するハード・ソフト機器等については、その機能のレベルによって多種多様であり、新規購入かレンタルかによってもランニングコストは大きく異なる。配送費も患者宅と薬局との距離が、どの位、離れているのかによって異なる。実質、各薬局の自由裁量に任されているようにも見えるが、導入を検討している保険薬局は“建前”でしかない“社会通念上、妥当な額の実費”設定に、戸惑うのではないだろうか?なぜなら、この価格設定は利用する患者の増減に大きく影響されると思うし、多額の設備投資により高度な情報通信機器を購入しても、国家戦略特区のモデル事業に見られたように、利用する患者が殆どいなければ“絵に描いた餅”に終わってしまう。

 そして、私見ではあるが前出43点・57点という報酬点数は低過ぎる。勿論、医師によるオンライン診療よりは高く設定出来ないとの事情も想定されるが、この点数では薬局側の導入へのインセンティブは働かない。

 全国展開する大手調剤薬局グループ等の中堅・大企業を除くと、患者側・薬局側双方のメリットは感じながらも、オンライン服薬指導の導入に慎重な保険薬局が現状、多いのではないだろうか?

処方せんの完全電子化等、普及には更なる規制緩和が必要との声

 さて、昨年に開催された中医協総会における議論を改めて振り返ると、オンライン服薬指導だけでなく、電子版“お薬手帳”の運用、電子処方せん解禁等も含めた薬局のオンライン全般に係る議論が活発化していた。

 そこで委員から出た意見として、「日本全国で薬局の存在しない町村は145存在し、約15%の町村が無薬局」であり、「人口が年々、減少する中で離島、へき地も含めた無薬局地域において遠隔からのオンライン服薬指導が有効に活用される」こと。一方で「コストのかかる」ことや、「現状ではインフラ整備が十分に進んでいない」こと、「個人情報の取り扱い等、患者のセキュリティ確保」等が今後の課題として浮上していた。そして、重要な指摘として某委員からは、「オンラインで服薬指導が可能な薬局薬剤師を指名し、医師が処方せんを送るのは、療養担当規則2条で禁止されている利益誘導に当たるのではないか。本来、患者には薬局を選ぶ権利がある筈だが、医師が予めオンラインによる服薬指導を担う薬局を選ぶ場合、患者は誘導ではないと納得して選択出来るのか?」との主旨の厳しい指摘もあった。この他、未だ解禁には至っていないが、経営力のある大手薬局チェーン等が電子処方せんの導入に舵を切った場合、仮に医師のオンライン診療に基づいて受けた「特定処方せん」を患者を介することなく直接、医療機関から薬局に電送可能という規制緩和が行われたとしたら、患者の「囲いこみ」を招かないかとの危惧が生じてもいた。

 しかし、一方ではオンライン服薬指導が解禁された現在、「処方せんの完全電子化が全面解禁されてこそ受診から服薬指導、薬剤の授受までの“一気通貫の在宅医療”が実現可能で、それなしにオンライン診療の利便性は享受出来ない」(平成30年4月20日・規制改革推進会議)との政府側の意見もあり、規制緩和を要望する声が、経済界、特にIT関連企業等からは強まってきた。

 課題山積の中、実際の患者ニーズよりも政府や経済界等の意向を優先し、拙速に制度化が進められた感もあるが、あくまでも「患者視点・国民本位」の制度設計の議論を政府には期待したいものだ。

外来オンライン服薬指導の流れ(イメージ)

 出典:厚生労働省「中央社会保険医療協議会総会」(令和元年12月20日)資料総‐3をもとに作成
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212500_00059.html

掲載している情報は、取材時もしくは掲載時のものです。
【掲載】2020年07月31日