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動き出した「介護医療院」
~報酬誘導により急増する中、見えて来た課題とは?

医療ジャーナリスト:冨井 淑夫

医療・介護・住まいの3つの機能を併せ持った新たな介護保険施設として、2018年の介護保険制度の改正で「介護医療院」が創設されました。
ここでは「介護医療院の特徴」と、「精神科系医療機関に及ぼす経営的影響」について、ご紹介します。

2020年3月31日までに「介護医療院」は343施設・21,738床に

 2018年の介護保険制度の改正で誕生した介護医療院が2018年4月1日から動き始めた。既に2018年2月には介護医療院の介護報酬や施設基準等が明らかになり、従来の介護療養型医療施設(以下、介護療養に略)や医療療養病床(主に25対1の療養2)、「転換型」介護老人保健施設(以下、介護老健に略)等から介護医療院移行への動きも加速してきた。厚生労働省は2020年5月1日、2020年3月31日時点の「介護医療院」開設状況(※1)を発表。それによると、介護療養の療養機能強化型A・Bに相当するⅠ型が230施設、転換型介護老健に相当するⅡ型が110施設、Ⅰ型及びⅡ型の混合型が3施設の計343施設(21,738床)開設されている。

 介護医療院はⅠ型・Ⅱ型の療養棟が同一の病院施設内で共存することも可能であり、同調査で初めて混合型2施設の開設が、明らかになった。従来から介護療養病棟が病棟単位でサービスを提供してきたことから、同様の考え方に基づく。療養床の内訳は、Ⅰ型が15,770床、Ⅱ型が5,968床になる。

※1 厚生労働省「介護医療院の開設状況について」 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000590199.pdf

 本稿では、最初に介護医療院の施設基準や介護報酬の内容を検証。併せて筆者が2018年6月以降に取材した幾つかの新生・介護医療院の動き等を参考にしながら、介護医療院に国が求める役割や、今後の行く末、更には創設により影響を受ける「介護老健の今後」等についても言及してみたい。

現状はファジーな運用規定 自治体と相談しながらの運営

医療と介護の複合的ニーズに対応する介護医療院の創設

 出典:厚生労働省「介護医療院の概要」を基に作成
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000337651.pdf

 要介護者の「長期療養・生活支援」を担う介護医療院には、大きく分けて〔介護療養型医療施設・機能強化型(A・B)相当〕(Ⅰ型)と、〔「転換型」介護老人保健施設相当以上の〕(Ⅱ型)の2つのタイプがあるが、基本的に(Ⅱ型)は2018年度から3年間は新設が認められず、現状は「転換型」介護老健だけが介護医療院への移行が可能だ。

 基準は医師に関して、前者が「48対1」、後者が「100対1」。何れも基本は病院と同様に、全体で3名以上の医師が必要とされるが、宿直を行う医師を置かない場合は「1名以上でも良い」とされる。全床(Ⅱ型)の介護医療院は、宿直なしでも問題はない。加え、「医療機関と併設した介護医療院で同一敷地内の医療機関の医師が速やかな診察を行なえる体制の確保されている」場合や、「都道府県が当該体制は確保されていると判断した」場合は、宿直を要しない。当該施設や自治体に判断を委ねるという、極めてファジーな施設基準の運用となり、筆者が2018年に取材し県で第一号の導入となった病院では、県の担当者と常に連絡を取り合い、確認しながらの運営を余儀なくされていた。

 (Ⅱ型)の場合は医師の増員なしに導入可能な施設が多く、「転換型」介護老健には導入し易い制度設計になっている。

 看護職員は(Ⅰ型)・(Ⅱ型)の何れも「6対1」の基準で、介護職員は前者が「5対1」~「6対1」。後者が「6対1」~「4対1」で、1人当たりの居室面積は何れも8.0㎡以上と、介護老健と同じ。従来、6.4㎡以上で運営されていた介護療養は、4人部屋を3人部屋にしてスペースを確保する等の一部、リニューアルが必要となった。

 療養環境面で重視されたのが、「自宅」と同様の生活施設としての位置づけで、従来の介護療養や介護老健は、多床室の場合、カーテンだけで区切る「個室化」でもOKとされてきた。介護医療院はカーテンと家具、パテーション等を組み合わせ室内を区分し、プライバシーを確保出来るスペースを作る必要がある。

 ケアミックス型等、医療機関と併設する介護医療院は併設する医療機関との設備の共有が可能で、診察室、臨床検査施設、処置室、エックス線室等は共有出来るが、病室・療養室の共有は不可。新築の施設の場合は、診察室の共有が原則、不可とされているのだが、個々のケースによって各都道府県・施設側の事情で認められる場合もあり、これもファジーな部分。この他、機能訓練室は「40㎡以上」と規定されているが、介護療養では求められていなかったレクレーションルームは「十分な広さ」、談話室は「談話を楽しめる広さ」と抽象的な表現に留まる。筆者が取材した地方で19ベッドの介護医療院を導入した病院は、レクレーションルームと談話室の共用が可能だった。小規模の場合は、県の判断で共用が認められる場合もあるのかもしれない。新たに導入する医療機関は、施設面については、当該自治体担当者と綿密に相談しながら検討することになりそうだ。

「移行定着支援加算」は1年間限定の臨時ボーナス

介護医療院 基本報酬及び算定要件

 出典:厚生労働省「介護医療院の概要」を基に作成
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000337651.pdf

 介護医療院に係る介護報酬に関し、基本報酬は、(Ⅰ型)(Ⅱ型)共に(サービス費Ⅰ~Ⅲ)までの三段階に設定。(Ⅰ型)のサービス費Ⅰは前出の「療養機能強化型A相当」でサービス費Ⅱ・Ⅲは「療養機能強化型B相当」になる。

 サービス費Ⅰ・Ⅱは介護職員「4対1以上」の基準で、サービス費Ⅲは「5対1以上」の基準、但し同Ⅲは医療機関に併設した介護医療院で入所19人以下の場合、基準緩和され、「6対1以上」でも構わない。そして、最上位ランクのサービス費Ⅰは入所者要件として、①「重篤な身体疾患を有する者及び身体合併症を有する認知症高齢者の占める割合」「50%以上」②「喀痰吸引、経管栄養、インスリン注射が実施された者の占める割合」「50%以上」③「ターミナルケアに該当する者の割合」「10%以上」が要求される。しかし、同サービス費Ⅱ・Ⅲは①「50%以上」②「30%以上」③「5%以上」――の何れかが達成されていれば良く、サービス費Ⅰに比べて、ハードルは下がる。サービス費ⅡとⅢの違いは介護職員配置だけなので、同Ⅲの介護医療院が努力して「4対1以上」をクリア出来れば同Ⅱへのランクアップが可能だ。

 そして、従来の介護療養との大きな相違点は、「生活リハビリの実施」「地域貢献活動の実施」が要件として義務付けられていることだ。

 (Ⅱ型)に関しては、よりシンプルで介護職員配置「4対1」、「5対1」、「6対1」の基準で、各々、サービス費Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの評価として差がつけられている。

 サービス費Ⅰ~Ⅲまで全て、前出・①「喀痰吸引等の割合」「15%以上」「認知症生活自立度Mの占める割合」「20%以上」「認知症高齢者の日常生活自立度Ⅳ以上」の占める割合が「25%以上」、更に「ターミナル体制のあること」の何れかの入所者要件に適合していることが条件となる。

 そして、介護医療院の入所者要件を満たせない場合は、「Ⅰ型特別介護医療院サービス費」「Ⅱ型特別介護医療院サービス費」と呼ばれる基本報酬が適用され、所定単位の「100分の95」要するに5%の減額措置が行なわれる他、後述する介護医療院だけに創設された「移行定着支援加算」等の4つの高単位の介護報酬が算定出来ない。

 従来の介護療養や「転換型」介護老健でも算定可能だった介護報酬項目が多い中で、前述の4つの報酬とは、「再入所時栄養連携加算」(400単位/回)、「緊急時施設診療費(緊急時治療管理)」(511単位/日)、「重度認知症疾患療養体制加算」(Ⅱ)100単位/日)〔加算(Ⅱ)で要介護5の場合〕《重度認知症疾患療養体制加算については後述》、及び「移行定着支援加算」(93単位)で、軒並み高い点数設定。介護医療院の利用者で、これら新機軸が算定可能な入所者が多ければ多いほど、増収が期待される。

介護医療院 4.加算関係(転換に伴い新たに創設)

 出典:厚生労働省「介護医療院の概要」を基に作成
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000337651.pdf

 特に、この中の最大の「目玉」として位置づけられたのは、「移行定着支援加算」。前出・他の3項目を算定するには、当該施設にどのような方が入所されているのかを精緻に分析する必要があるが、移行定着支援加算は入所される方の状態や要介護度等が問われることなく、求められる条件を満たせば、転換した介護医療院の全ての入所者に算定可能。仮に転換したばかりの100床規模・介護医療院で、満床の場合「930円×100人×30日」=279万円が1カ月の移行定着支援加算収入。つまり、1年間では279万円×12=3348万の増収が期待できる。但し、移行定着支援加算は「届出後、1年間」しか算定出来ないことに加え、「介護医療院の認知度が高まると想定される2021年3月末」までに届出のタイムリミットが設定されている。要するに、これは早期導入を促す厚生労働省の誘導策だ。

「介護難民」の受け皿として期待
2021年介護報酬改定で新たな再編?

 移行定着支援加算を算定する条件としては、介護医療院の「地域住民への周知・説明」や院内掲示、交流イベントの開催等が求められている。算定要件には「広報活動」への言及はないものの、これらの活動は広義には「広報」活動として捉えられるものだ。

 介護報酬とは少し外れるが、厚生労働省は介護医療院のロゴマーク(※2)を既に公募・作成し、その役割を国民へPRすることに余念がない。これが何を意味するのかを考えると、恐らく厚生労働省は介護医療院を、「介護が必要なものの医療必要度が高いがゆえに家族のいる自宅や病院、施設等でも介護を受けることが出来ない」人たちの受け皿として期待していると思う。所謂、「介護難民」と呼ばれる人たちだが、厚生労働省は2012年段階でわが国に約550万人の介護難民が存在し、2025年には約700万人にまで達すると推計している。

※2 厚生労働省「介護医療院のロゴマーク」(https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000337621.pdf

 介護医療院の入所者要件に規定された喀痰吸引、経管栄養、重度糖尿病、重度認知症等は、医療機能の脆弱な介護施設等では受け入れてもらい難い人たちであるし、前出「緊急時施設診療費」、「重度認知症疾患療養体制加算」、「再入所時栄養連携加算」等は、明らかに医療依存度の高い高齢者を対象に新設されたものだ。

 「介護難民」とは元来、マスコミが創り出した用語で制度的な位置づけがなく、同省は直接、言及してはいないが、広報に注力することで国民に対し、「介護難民の受け入れ先」としての役割を認知してもらうのを目指していると思う。

 更に、もう一つ介護医療院を巡る課題としては、介護老健の今後の行く末だ。介護老健の経営は介護医療院が誕生した2018年同時改定後、急速に低空飛行気味に推移している。日本慢性期医療協会が同年7月に介護老健150施設を対象にしたアンケート調査では、「2015年と比較した稼働率」が「低くなっている」との回答が約39.8%と最多(高くなっているは28.6%)、「2013年調査時と比較した収支の推移」では、全体で「悪くなっている」との回答が約46.1%と最多(「改善している」が約31.6%)を占めた。介護老健全体で稼働率低下と収益ダウンを招く事態を招いているのだ。その原因としては、介護老健が突然、「在宅扱い」から外され、在宅復帰率にカウントされなくなり、病院からの紹介が激減したこと。算定要件に極めて複雑な「在宅復帰・在宅療養支援等指標」が導入され、新指標の追加要件をクリア出来ない介護老健は、大きく減額された「その他」型介護老健へと下方修正せざるを得なくなった。「その他」型までランクダウンすると、このままでは介護老健としての存続が、難しくなると予想される。現在、供給過多の介護老健と増えつつある介護医療院の再編・統合や整理は、「移行定着支援加算」終了後の2年後・介護報酬改定を契機に進められそうだ。要するに、2021年の介護報酬改定では、介護医療院の報酬も大きく「方向転換する」可能性は否定出来ないし、個々の介護医療院の「ケアの質」によって、介護報酬に更にメリハリが付けられていくのではないだろうか。

精神科と相性の良い介護医療院 在宅移行を進める上での武器に

 さて、最後に介護医療院の導入が精神科系医療機関に及ぼす経営的影響について考えてみたい。介護療養で従来、介護報酬で評価されてきた特定診療費が今改定から「特別診療費」に名称変更され出来高算定が可能になった。特別診療費の中には「精神科作業療法」、「認知症老人入所精神療法」、「摂食機能療法」等も含まれるが、これら療法は従来、精神科系医療機関が実施してきたもので、機能として精神科と重複する部分が少なくない。現状では、精神科病床を介護医療院に転換することは認められてはいないが、精神科病床の削減を喫緊の課題とする厚生労働省が、精神科入院患者の高齢化進展に伴い同病床を介護医療院にシフトさせる可能性は、今後の制度改正の行方次第で、あり得ないことではないと思われる。実際に精神科と介護医療院との相性は良く、精神科系病院の中には医療療養や介護療養、介護老健等を運営する医療法人も数多く存在するが、これらの施設の介護医療院への転換を目指すところは少なくない。

 ある精神科病院の院長は「当医療法人グループの有する150床の医療療養と介護療養を全て、介護医療院に転換する予定だ。精神科病院と介護医療院との両者の連携による経営的メリットは計り知れない」と指摘する。例えば、「精神科急性期治療病棟入院料」、「地域移行機能強化病棟入院料」、「精神療養病棟入院料 精神保健福祉士配置加算」等の精神科診療報酬項目は「自宅等への移行」が求められるが、今改定後、介護医療院が「自宅扱い」となったことで、算定し易くなった。特に「精神療養病棟入院料 精神保健福祉士配置加算」「75%以上の入院患者の1年以内での退院・自宅等への移行」が要求されるが、受け皿として介護医療院があれば要件のハードルは低くなる。つまり、精神科系医療機関は国が政策誘導する在宅移行を進める上で、連携する介護医療院の存在は、大きな武器になるということだ。

介護医療院 4.加算関係(転換に伴い新たに創設)

 出典:厚生労働省「介護医療院の概要」を基に作成
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000337651.pdf

 もう一つは、介護報酬における前述「重度認知症疾患療養体制加算」の新設だ。重度認知症疾患療養体制加算「入所者の全てが認知症であり、PSWや看護職員が一定数以上、配置され精神科病院との連携等の要件を満たす」場合に算定可能。精神科との有機的連携が大きなプラスに働く加算項目だが、これは従来、介護療養の「老人性認知症疾患療養病棟」が担っていた役割と近い。

認知症治療病棟に係る評価の見直し

 出典:厚生労働省診療報酬改定説明会「平成30年度診療報酬改定の概要(医科1)」(平成30年3月5日開催)を基に作成
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000198532.pdf

 一方、精神科に係る診療報酬改定では「認知症治療病棟入院料」の包括範囲から「摂食機能療法が除外」されたこと。更に、認知症治療病棟の「認知症患者リハビリテーション料」を算定出来る期間が突如、「1カ月から1年間」に延長された。

 これらの改正点から、「認知症治療病棟は近い将来、再編が進められ整理され、一部は介護医療院に収斂されていくのではないか?」(介護経営コンサルタント)と予測する意見もあることを指摘しておきたい。

掲載している情報は、取材時もしくは掲載時のものです。
【掲載】2020年07月10日