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第8次医療法改正で導入された「医療機関ウェブサイト」広告規制の全貌
~胎動する医療機関「ネットパトロール隊」~

医療ジャーナリスト:冨井 淑夫先生

2017年6月7日に可決・成立し、同年6月14日に公布された第8次医療法改正では、特定機能病院の安全管理体制の強化や、医療法人の運用に関する施策等と共に、「医療機関のウェブサイトに関しても医療広告と同様に虚偽や、誇大な広告を罰則付きで禁止する」ことが規定されました。そのため、医療広告ガイドラインに基づき比較・虚偽・誇大広告については行政指導されます。
ここでは、第8次医療法改正で導入された「医療機関ウェブサイト」広告規制等について、ご紹介します。

「広報」から「広告」へ医療機関ホームページが規制の対象に

 2017年6月7日に可決・成立し、6月14日に公布された第8次医療法改正では、特定機能病院の安全管理体制の強化や、医療法人の運用に関する施策等と共に、「医療機関のウェブサイトに関しても医療広告と同様に虚偽や、誇大な広告を罰則付きで禁止する」ことが規定され、2018年6月1日に施行された。

 出典:厚生労働省「第5回医療情報の提供内容のあり方に関する検討会」(平成29年10月4日)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000179706.pdf

 出典:厚生労働省「第5回医療情報の提供内容のあり方に関する検討会」(平成29年10月4日)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000179706.pdf

 医療機関ウェブサイトの実態に詳しい、医療機関検索専門サイトDDマップを運営する友田祐造氏は、「脱毛や脂肪吸引等を行う美容医療で施術効果を誇張したり、安価な料金を掲載する等のケースが目立ち、契約トラブルや健康被害の相談が急増したことから、厚生労働省は医療機関のホームページ(HP)を今回初めて、“広報”から“広告”に位置づけを変更したと言える」と指摘する。国民生活センターによると2016年度に全国から寄せられた美容医療に関する相談は2077件あり、このうち患者が医療機関のホームページやネット情報がきっかけで受診したのは456件にも及んだ。

 医療広報に詳しいNPO法人日本HIS研究センターの石田章一氏は、「規制の対象はきっかけを作った美容医療の分野だけでなく、全医療機関であることを肝に銘じて欲しい。規制の範囲は動画サイト等も含めた医療機関ホームページに加え、その内容によってはツイッターやブログ、他者によるアフィリエイトサイト(例えば、病院ランキング等)、バナー広告等も含まれる」と警鐘を鳴らす。更に、同氏は「厚生労働省は近年、“医療の情報公開”を積極的に推進する方向性を打ち出して来ましたが、今回の医療機関に対する規制は、そうした流れと逆行しているのではないか」と付け加える。

医療広告ガイドラインに基づき比較・虚偽・誇大広告を行政指導

 法改正に至った経緯としては、最初、2015年7月に内閣府の消費者委員会で「美容医療サービスに係るホームページ及び事前説明・同意に関する建議」が行なわれ、2016年3月から9月まで厚生労働省の「医療情報の提供内容等に関する検討会」へと議論が移行。今改正に結びついた。その後、厚生労働省・医政局総務課が2017年8月24日、「医療等に係るウェブサイトの監視体制の強化事業」を開始するとのプレスリリースを発表。正式名称は「医療機関ネットパトロール」。同省内に同ネットパトロール相談室が設置され、「医療機関のウェブサイトにうそや大げさな表示があったら、情報をお寄せ下さい」との文言と共に電話番号が明記され、通報フォームが設定されている。加えて、「本事業においては、広く一般の人からも通報を受け付けます」と国民に呼びかけられている。要するに国が正式に認知した通報制度であることが理解出来る。

 出典:厚生労働省「偉業等に係るウェブサイトの監視体制強化事業の開始」(平成29年8月24日)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000175183.pdf

 通報先には厚生労働省と並んで消費者庁の外郭団体・一般社団法人日本消費者協会(JCA)が併記されている。そのことから、消費者庁が同省とタッグを組み、積極的に関与する事業であるのは明らかだ。平成29年度は僅か4154万円の予算が付けられていたに過ぎないが、事情通の新聞記者によると「前のめりなのは消費者庁で、今後、予算枠を拡大し全自治体に同ネットパトロールの拠点を作り、事業規模を拡大したい思惑がある。通報を受け付けるのは厚生労働省とJCAが併記されているが、事業の性格上、JCAが実働部隊として主導していくのではないだろうか」と推測する。

 さて、法律に違反した場合は、「6カ月以下の懲役、または30万円以下の罰金」が科せられる。医療法改正に係る法文では、①他の病院または診療所と比較して、優良であるとの広告はしないこと。②誇大な広告はしないこと。③公の秩序または善良の風俗に反する内容を広告しないこと④その他、医療に関する適切な選択に関し、必要な基準として厚生労働省で定める基準――としている。④にある必要な基準、要するに厚生労働省が改正医療法施行に先立って策定、公表していた「医療広告ガイドライン」に基づき、比較広告、虚偽広告、誇大広告等については、厳しい行政指導を徹底することになる。この4つは医療機関のカンバンやチラシ等を規制してきた内容と同じであるが、ウェブサイトもこれら法文に則って、制作・運用することが求められるのは言うまでもない。

 2017年8月下旬からネットパトロール隊は既に動き出しているのだが、厚生労働省によると不適切な記載があるとして把握出来ているのは、2017年9月末までに279件、それらの殆どが美容医療系の医療機関で占められた。厚生労働省の有識者検討会では、今後、美容医療等によく見られる手術前と後の患者の写真掲載を原則、禁止する等の新たなガイドラインや省令案等を取りまとめていく方針だ。

治療結果成績は掲載可能だが「治療の効果性」を謳った広告はアウト

 事業がどのように進められるのかについては、厚生労働省と各自治体の消費者生活センター等が連携して、まずは消費者からの通報を受けた段階で、当該医療機関にメールで警告が送られてくることになる。

 前出の友田氏は「不適切なウェブ記載に対して同パトロール隊から警告が発せられ、その初期の警告段階で医療機関側が改善すれば、行政指導や罰則に至る事態は回避できる」と指摘する。加えて、同氏は「ウェブサイトについては外注する医療機関が多いと思われるが、プロバイダや広告代理店等は仮に大手であっても、中には医療広告の規制に関して不勉強な企業も多いので、注意が必要。今回の改正をきっかけに、医療機関も専門家の協力の下に自院のホームページやウェブサイトを今一度、点検して、外注先企業の変更等も含めて、リニューアル等を検討した方が良い」と強調する。更に、「最近、医療機関等で流行のYouTubeを使った情報発信は、ほぼ全て外注していると思われるが、その内容をつぶさに検証すると、不適切な表現等も散見されることがある。YouTubeの動画サイト等についても業者へ任せきりにしないで、チェックすべきだ」と注意を促している。同パトロール隊は自主的な見直しを行なわなかったり、警告に従わない医療機関に対し、所管する自治体に情報提供を行って当該自治体が追跡調査を行っていくが、それでも改善されない場合は、前述のような罰則の対象になるのは間違いない。

 また、監視や行政指導の対象になるのは、医療機関だけでなく外注先やホームページを制作するプロバイダ、広告代理店、企画制作会社等も同様であり、警告後の改善が見られない場合は、罰則の対象となる。インターネットのバナー広告について付け加えると、医療法やガイドラインで認められた「広告が可能な事項」であればОKだが、そうでない場合は監視・行政指導の対象になる。

 それでは、どのような医療広告が行政指導の対象になり易いのだろうか?

 友田氏は「基本的に踏まえておくべきは当該医療機関の実施した“治療の効果性”をホームページ上で謳った広告は、誇大広告とみなされる可能性が高い。医療サービスの受療者には皆、個人差があり、同じ処方や術式であっても治療効果は一律ではなく、人それぞれによって違う。100%成功する保障のないのが医療サービスであり、そのことは厚生労働省の『医療広告ガイドラインに関するQ&A』にも明記されている」と説明する。

 同ガイドラインでは「治療効果については個々の患者の状態等により、結果は異なるものであり、実際の医師や歯科医師の診断に基づいて、個々の患者の病状に応じて説明すべき事項」として「効果については誤認を与える恐れのあることから、広告可能な事項にはなっていない」との趣旨が書かれている。

 それを前提に、同氏は「大原則として保険診療を主体とする医療機関はホームページに記載する文章では、当該医療機関が提供した医療に関して、ストレートな“治る”とか“完治する”と言った表現は避けるべき。美容外科等、自由診療を主体とする医療機関の中には、平気でそれに類する表現を使ってきた施設が多く見られたが、今後はアウト」と指摘する。一方、病院がエビデンスに基づいたクリニカル・インディケーター(臨床指標)をホームページ上に掲載することは、広告規制に全く抵触しない。

 厚生労働省も「医療機関の情報公開を推進する」立場から、手術件数や術後生存率、死亡率等の治療成績は積極的にディスクローズすべきとの立場である。同ガイドラインでも「治療分析を行っている旨及び当該分析の結果を提供している旨」については、「広告可能」と明記されている。

危惧されるのは過当競争によりライバル同士の通報合戦

 さて、前述の石田氏は歯科クリニックや皮膚科クリニック等、保険診療と自由診療の両方に対応する医療機関の医療広告に対して、注意を促している。

 「歯科クリニックのホームページ等を検索すると、審美歯科を標榜する医療機関名が数多く現れるが、本来、審美歯科はインプラント歯科等と同様、標榜出来ないし厚生労働省の『医療広告ガイドラインQ&A』でも“広告出来ない”趣旨のことが書かれている。これまで、ホームページ上では広報活動として問題にならなかったとしても、今改正によりアウトの可能性が出て来る。この他、病院のホームページにおける医師の紹介で、“厚生労働省認定〇〇専門医”、“〇〇専門医”等の曖昧な標記は誇大広告として扱われる。広告に当たっては医師名の後に、“○○学会認定○○専門医”のように、認定団体の名称を資格名と共に示す必要がある。」

 もう一つの例として、病院がホームページで手術した患者の「術前・術後の写真」を掲載することは「治療の効果」と受け取られるために当然、アウトだが、筆者が専門家に聞いた話では、「術前」だけ、「術後」だけの写真であっても広告規制の対象になるらしい。アメリカの病院の広告等では、手術した患者の写真を掲載しているケースは多く見られるが、こうした広告もわが国の病院は現段階では、避けた方が良いだろう。

 従来、ホームページは「広報」の扱いで野放しとされてきたが、今後は「広告」として扱われることを認識し、医師紹介等についても曖昧な表現を避け、標記には細心の注意をすることが求められる。

 医療機関の方々には、2012年に示された「医療機関のホームページの内容のあり方に関する指針(医療機関ホームページガイドライン)」を改めて確認して頂きたい。そして、最後に今改正により想定される「副作用」についても考えてみよう。

 これは、筆者に寄せられた都心部の某歯科医院関係者の匿名の“つぶやき”として受け取って頂きたい。

 「私たちが診療している地域では歯科診療所の開業ラッシュにより、過当競争で歯科医院同士の“仁義なき戦い”が勃発している。自由診療を主体とする歯科医院の中では、ライバルを蹴落とすために、実際に過剰に思えるインターネット広告に対して、同業者間の通報合戦が起こらないかが危惧される。」

 このような事態が、歯科医院や美容医療の領域だけでなく、医療機関全体に波及しないかが心配されるところだ。

 多くの国民がインターネット情報に基づいて気軽に医療機関を受診する時代を迎えているが、消費者側が「問題のある表現が、これだけ多いのか」に気づくようになり、医療リテラシーを磨く契機になれば、今改正は意義のあるものになるとも思うのだが。

 厚生労働省は今後、典型的な通報内容を記した事例集を作成し、医療機関に注意を呼びかけていく方針だ。

掲載している情報は、取材時もしくは掲載時のものです。
【掲載】2018年09月07日