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地域包括ケア時代の「入退院支援」
~注目される「退院支援」から「入退院支援」への見直し

医療ジャーナリスト:冨井 淑夫先生

厚生労働省は2008年の診療報酬改定での「退院調整加算」創設を機に2年に1度の改定毎に、「入院治療計画の策定」→「医療機関の連携の推進」→「退院支援計画の策定と退院時の情報共有の推進」を促進する報酬項目を拡充してきました。こうした流れを受けた2018年診療報酬改定では、入退院支援に係る新設項目は前回改定と比較すると少なくなりましたが、算定要件等に入退院支援を更に促進する改正点が目立っています。
ここでは、「入退院支援」のワークシェアリングと子ども達の支援充実や基幹病院等における入退院支援に向けた「外来・入院」部門の連携を強化、さらに精神科医療機関における平成30年診療報酬改定の「退院・訪問支援」に関連した改正ポイント等について、ご紹介します。

予定入院患者の「入院前支援」を初めて評価した「入院時支援加算」

 厚生労働省(以下、同省)は2008年の診療報酬改定での「退院調整加算」創設を機に2年に1度の改定毎に、「入院治療計画の策定」→「医療機関の連携の推進」→「退院支援計画の策定と退院時の情報共有の推進」を促進する報酬項目を拡充してきた。

 エポック・メーキングになったのは2年前の2016年改定で、従来の「退院調整加算」を廃止し「退院支援加算1・2・3」(同加算に略)の3段階に再編(注・同加算3は新生児を対象にした退院支援の評価)。同加算の要件を満たした上で介護支援専門員との連携に対する「介護支援連携指導料」の引き上げ(300点→400点)や、重症患者の退院直後の患家を訪問し療養指導を実施すれば「退院後訪問指導料」(新設・580点)が算定出来る等、入退院支援への評価を充実させた。この他にも「地域連携パスに則って退院させた場合」に300点が前出・同加算1・3に加算出来る「地域連携診療計画加算」(以下、同計画加算に略)、訪問看護STの看護師が同行すると「退院後訪問指導料」20点が加算される「訪問看護同行加算」も前回改定で新設されたものだ。

 こうした流れを受けた2018年診療報酬改定では、入退院支援に係る新設項目は、前回改定と比較すると少なかったが、要件等に入退院支援を更に促進する改正点が目立った。

 一つ目は、従来の「退院支援加算1・2・3」が「入退院支援加算1・2・3」(同支援加算に略)に名称変更されたこと。現行の同加算が「入院早期から退院時までの切れ目ない支援を評価している」ことから、「退院支援」よりも「入退院支援」の方が相応しいとの判断だが、2017年8月24日に開催された中医協(入院医療等の調査・評価分科会)での議論の内容を、今一度、振り返っておきたい。

 出典:厚生労働省「平成29年度第6回入院医療等の調査・評価分科会」(平成29年8月24日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000174881.html

 同分科会の資料では、同加算「介護支援連携指導料」「退院時共同指導料2」等の連携に係る算定が増えている一方で、早期からクリティカルパスを作成し、医療・介護事業所等と情報共有することが必要な前出・同計画加算の算定が伸びていないことが明らかになった。

 また、「同加算1・2」算定医療機関の中から、「退院困難な要因」を抽出したところ具体的な状況として家族からの虐待や家族問題、生活困窮者や保険未加入者、未婚等で育児サポートが出来ず、退院後の養育支援等の必要な患者等の状態を紹介。

 これら課題を踏まえ、中医協では「入院早期からこれらの状態を把握し、速やかに関係機関と連携し、入院中から支援する必要がある」と同時に、「入院早期に入院前に利用していたサービスを把握し、退院後に向けて調整が必要」との考え方が示された。要するに、格差社会の進展で今後、「貧困の連鎖」により医療困窮者や無保険者等の増加が予想される。社会政策的な側面から、高齢・小児患者、障害を有する患者等、社会的弱者が、家族等からの虐待や育児・介護放棄等に直面することだけは回避しなければならない。そのために同省は、行政、福祉関係者だけでなく、医療施設等にも当該患者に対しても、より早期での介入や支援を期待しているわけだ。

 更に、退院支援において要介護被保険者と介護支援専門員とのやり取りが十分に行なわれていないケース等も露呈し、中医協を取材していた業界誌記者は、「入院前或いは入院早期からの効果的な退院支援を、より一層、強化することが喫緊の課題であり、今改定の重要なテーマとして位置づけられていた」と指摘する。

 そうした課題に応える報酬項目として新設されたのが、「入院時支援加算」(200点・退院時1回)「入退院支援加算」を算定する自宅等からの「予定入院」患者が対象であり、病院の外来での「入院前退院支援」を初めて評価した画期的な新機軸と言える。

「入退院支援」のワークシェアリングと、子ども達の支援充実

 「入院時支援加算」の要件で「予定入院患者が安心して入院医療を受けられるよう、より優しく丁寧な医療を推進する」観点から、「①外来において入院中に行われる治療説明、②入院生活のオリエンテーション、③持参薬の確認、④褥瘡・栄養スクリーニング等を実施・支援した場合の評価を新設」との記述に注目したい。

  「予定入院」患者に対して入院事前の外来段階で、これら入院時に行われてきた仕事を終わらせておけば、病棟業務をかなり効率化出来る。特に短期間で入退院が頻繁に繰り返され、常に多忙を極める高度急性期病院等の病棟看護師の仕事は削減され、楽になる筈だ。「入退院支援加算1・2」(旧・退院支援加算1・2)の施設基準では「退院調整部門の設置」が義務付けられ、「看護師または社会福祉士の専従」が求められる。一方、新設「入院時支援加算」①②は主に看護師や社会福祉士が担う業務だが、は薬剤師、の栄養スクリーニング等は管理栄養士が担う方が相応しいし、入院前検査の説明等も検査技師が担当した方が良い筈だ。某社会医療法人病院管理部長はここで、これら個別業務への言及があるのに着目し、「外来での入院前支援で看護師・社会福祉士が必ずしも全ての業務を担う必要はなく、薬剤師や管理栄養士等、多職種の参加を促し、退院支援のワークシェアリングを進めて欲しいとの同省のメッセージとも受け取れる。“働き方改革”と連動して、病棟でも入退院支援のワークシェアリングは今後、進展していく筈だし、今改定では導入されなかったが、2年後に予定される診療報酬改定では、入退院支援の多職種協働を評価する(加算等の)報酬項目が新設される布石ではないか」と予測している。

 さて、今改定の「入退院支援の推進」に戻ると、小児患者のサポートに係る報酬項目が新設・拡充されていることが目立つ。「入退院支援加算」算定要件にある「退院困難な要因」の中に、前出「虐待とその疑いや生活困窮者・医療保険未加入者」等に加え、「小児における退院困難な場合」が追加された。同時に、「介護支援連携指導料」の算定要件を小児科専門医療施設・病棟の場合は緩和する等、小児科系医療機関と介護支援専門員との連携強化を促している。この他、「入退院支援加算1・2」を算定する「15歳未満」の患者を対象にした「小児加算」(退院時1回)も新設された。同加算1・2を算定する小児患者が増えれば自ずと収入アップに繋がる。小児患者の退院支援への早期介入や医療連携等の取り組みを、積極的に進めるための誘導策だ。

 また、今改定では、「入退院支援」に係る領域だけでなく「ハイリスク妊産婦連携指導料1・2」等、様々な課題を抱えた子ども達の「養育」を後方支援する新設項目も散見される。わが国は、17歳以下の子どもの貧困率が13.9%(2016年国民生活基礎調査)とOECD諸国の中でも顕著に高く、“一人親世帯”の場合、半数以上の子どもが貧困問題を抱えているとされる。生活困窮等、課題を抱えた子ども達を福祉政策だけでなく診療報酬でもサポートしようとの同省の姿勢は、社会政策的視点から積極的に評価したい。

基幹病院等では入退院支援に向け 「外来・入院」部門の連携を強化

 中医協での議論が煮詰まって来た2017年9月から10月にかけて、筆者は全国、幾つかの高度急性期病院における「入退院支援」の取り組みを取材した。

 多くの病院で共通していたのは「2016年改定で“退院支援加算1・2・3”が再編・新設されてから、病棟での退院調整のスパンが極めて早くなった」こと。特に同加算1の算定要件には「入院後3日以内の退院困難患者の抽出や、同7日以内の退院支援計画の作成着手・多職種カンファレンス実施」等、厳格な日数要件を設定。スピードが要求されるようになった。そのため、専従等の退院支援ナースや病棟ナース、社会福祉士等も参加する多職種カンファレンスでは、職場毎に事前のスケジュール調整をして、早期からの退院支援に取り組む必要があることを、退院調整担当者の多くが指摘していた。

 取材した中の一つ「総合病院 聖隷浜松病院」は、随分前から「院内認定退院支援看護師」制度を導入し、独自の研修カリキュラムにより退院支援ナースの養成を実施してきた先駆的な病院だが、2017年10月段階で約200名の認定を受けた退院支援ナースが、各病棟・退院支援室等で活躍していた。同院では従来は「前方連携」、「後方連携」、「在宅連携」、「相談支援」等の各部署が個々に独立して運営されてきたが、2015年にERや手術・救命救急センター等を配備した新棟完成と同時期に、これらの連携や入退院・患者支援に関する機能を一つに集約した「患者支援センター」を開設した。同センターは病院玄関横に設置され、外来フロアに近いところに位置する。どんな状況の患者でも困った時に、同センターへ相談に訪ればワンストップで支援出来る体制を整えた。同センターでは、外来患者の入院前相談も2015年頃から実施し、早くから取り組んできた。

 入院前支援に関して、地方都市・公立A病院では、2017年、9月頃から外来受付横に入退院支援の新部署・「患者サポートセンター」を開設。専従看護師3名とMSW1名を配置した。A病院事務長によると「中医協での議論を見据えて病棟における退院支援だけでなく、外来通院中からの退院支援活動は必ず必要になると確信していた」と語っていた。

 中医協の同分科会では当時、「外来通院中の患者が入院する際に決められた部署や窓口を設置している病院が約6割以上、そのうち約7割の病院では看護師がその調整役を担っている」との報告がなされていた。A病院のような基幹的な高度急性期病院の多くは、今改定よりも以前から早期で、円滑な「入退院支援」に対応すべく「外来部門と入院部門との連携」を進めてきた経緯がある。新設「入院時支援加算」も、従来の取り組みの延長線上で届出可能な病院は少なくないと思われる。

 A病院のMSWを取材した際にも、やはり「家族による小児患者への虐待や育児放棄、生活困窮による支払困難者、無保険者」等の困難事例が語られたが、悩ましいケースが増える中で「適切なサポートを行うべく情報共有を求めても個人情報の壁があり、限界を感じる場面にも直面する」との話が印象的だった。

 専門家の立場から金城大学看護学部・彦 聖美教授(在宅看護学)は2017年、筆者の取材に答えて「退院後の先のことも見据え、入院前・外来通院中の段階から個々の患者のアセスメントを強化していくのは当然の流れ。外来通院中から関与していくことで、患者の家族背景や経済状態等もある程度、把握出来るので、退院後や在宅復帰等の支援も進め易くなる」と語っていた。実際にマンパワーの余裕がない中小民間病院等では、「同支援加算2」を届出しながらも外来通院中の患者への入院前「退院支援」を実施出来ていないケースも多いと聞く。「入院時支援加算」新設が、中小病院にもそれを普及させる一つの契機となることを期待したい。

措置入院患者に対する3つの「退院支援」評価

 出典:厚生労働省診療報酬改定説明会「平成30年度診療報酬改定の概要(医科1)」(平成30年3月5日開催)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000198532.pdf

 それでは最後に精神科系医療機関における今改定の「退院・訪問支援」に関連した改正ポイントを抽出してみたい。精神科入院医療に関しては近年、国の施策で退院促進・在宅移行が進められてきたが、65歳未満で統合失調症等の患者が多くを占める「措置入院患者」と、65歳以上の患者が増加し高齢患者の長期入院が最大の課題である措置入院以外の「精神病床入院患者」とを分けて考えた方が分り易いかもしれない。

 前者に関しては3つの新機軸を導入。措置入院置患者に対し「自治体と連携した退院支援を実施」した場合の①「精神科措置入院退院支援加算」(600点・退院時)、「措置入院を経て退院する患者への措置入院ガイドライン運用を踏まえ、自治体の作成する退院後の支援計画に基づき実施する②通院・在宅精神療法の新区分追加」、更に「看護師または精神保健福祉士が、措置入院を経て退院した患者への総合的な支援を行った」場合の③「通院精神療法 措置入院後継続支援加算」(275点・3か月に1回)等の評価が新設された。

 出典:厚生労働省診療報酬改定説明会「平成30年度診療報酬改定の概要(医科1)」(平成30年3月5日開催)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000198532.pdf

 細かい算定要件等については点数表を見て頂きたいが、これら要件にある「退院後生活環境相談員」選任や、「自治体との連携強化」、「退院後支援計画の策定」、「退院後支援ニーズ・アセスメント」等は、2017年9月28日に廃案となった「精神保健福祉法」改正案の中に織りこまれていたものだ。多くの専門家から問題点が指摘され、今後の流れが見えない同法改正案だが、同省は「措置入院後の医療等の支援を継続的に行う仕組み」作りに関しては、その多くを生かしながら、診療報酬誘導により適切な退院後支援を促していくと見られる。措置入院等に係る報酬で、従来は「退院後の継続的支援」に係る要件は規定されていなかったので、は画期的な新機軸と捉えたい。

 後者の最も大きなトピックスは「長期入院後の患者等、在宅の精神疾患重症患者への多職種協働による訪問支援や緊急時対応」を評価した「精神科重症患者早期集中支援管理料」(以下、同管理料)を廃止し、「精神科在宅患者支援管理料1・2」(以下、同1・2)に新設・再編されたこと。同管理料は2017年の中医協でも「24時間対応の確保」要件のハードルが高く、2016年7月段階での届出は22医療機関に留まり、見直しを示唆されていた。

 要件は詳細に設定されているが、上位ランクの同1「当該医療機関が訪問看護を提供した場合」で、同2「連携する訪問看護STが訪問看護を行った」場合の評価。これに関して、制度の立て付けは従来の同管理料と同じ。更に同1「イ・集中的な支援を必要とする重症患者等 ロ・重症患者等 ハ・重症患者等以外」の3段階に分けて点数を傾斜配分。同2イ・ロの2段階に分かれる。

 同管理料と同様に「単一建物診療患者1人」と「同2人以上」の2段階に分かれ、当然前者の「同一人」を高く設定している。に関しては、点数が低いものの「24時間の連絡体制や往診体制に係る施設基準が緩和」され算定し易くなった。最上位ランク同1・イ・「同一人」の場合は3000点。これに該当する患者が多いと、廃止された同管理料と比較して大幅な収入アップとなる。最下位ランクの同2・ロ・「同2人以上」だと1542点だから、要件のハードルによって点数に大きなメリハリを付けた。評価が細分化されている上に、施設基準の改正点も幾つかあるので点数表を当たって頂きたい。

 出典:厚生労働省診療報酬改定説明会「平成30年度診療報酬改定の概要(医科1)」(平成30年3月5日開催)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000198532.pdf

 また、精神科重症患者早期集中支援管理料1・2を算定し半年以上経過している患者に対しては、新設の「精神科オンライン在宅管理料」(100点)が算定出来る。この他、精神病床入院患者の高齢化に対応し、「精神科急性期治療病棟入院料」等の「在宅移行に係る要件」のある精神科報酬項目に関して、移行先(退院先)要件は従来、患者の自宅と精神障害者施設に限定されたが、今改定で「介護老人保健施設と介護医療院が追加」された。中医協では特別養護老人ホーム等の追加も検討されていたが、今回は見送られたようだ。

 また、「精神療養病棟入院料 精神保健福祉士配置加算」要件にある移行先も「介護老人保健施設・介護医療院が追加」されると共に、入院1年以内の在宅移行率(措置・鑑定・医療観察法入院患者は除く)「70%以上→75%以上」に引き上げられたことも注目したい改正ポイントだ。

掲載している情報は、取材時もしくは掲載時のものです。
【掲載】2019年07月27日