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2018年診療報酬改定の新機軸を検証する
重要キーワードは「多様な精神疾患への対応」と「社会政策的視点」

医療ジャーナリスト:冨井 淑夫先生

このコンテンツの前半は、2018年診療報酬改定での精神科系医療機関にも影響する大きなパラダイム・シフトを目指した新機軸を、医療現場の動きも交えて重点的に解説しています。
後半では、認知症も含めた精神科医療に係る注目すべき新機軸を幾つか抽出し、ご紹介しています。

社会政策としての報酬改定の意義 「ハイリスク妊産婦連携指導料」新設

 2018年2月7日、中医協会長から厚生労働大臣に「平成30年度診療報酬改定」の答申書が出され、今改定の具体的な内容が明らかになった。多くの専門家の指摘によると今改定は、時代の変換に対応すべく、従来の診療報酬政策の概念を「劇的に覆す」パラダイム・チェンジを目指した改正とされる。実際に今改定では従来からの「地域包括ケア推進」や「医療の効率化・適正化」等の考え方に加え、「オンライン診療」、「働き方改革」等の新しいキーワードが散見される。これらに加え、筆者は社会的マイノリティや弱者に対する不寛容や排他主義が世界的な拡がりを見せる中で、多様性を重視し「寛容な社会の実現」を目指した報酬項目が幾つかあることにも着目した。例えば、語られることは少ないが、LGBTの方々への性別適合手術が(一定の条件を満たした医療機関に限定し)保険適用に認められたのは、その一つと言える。賛否両論あろうが、改めて「社会の仕組みを、より良い方向」に変えることを目指した報酬改定の意義について考えさせられた。

 本稿はスペースが限られていることから、改定率等も含めた総花的な解説はしない。あくまでもピン・ポイントで、前半は、今改定での精神科系医療機関にも影響する大きなパラダイム・シフトを目指した新機軸を、医療現場の動きも交えて重点的に解説する。後半部分では認知症も含めた精神科医療に係る注目すべき新機軸を幾つか抽出し紹介したい。

 出典:厚生労働省診療報酬改定説明会「平成30年度診療報酬改定の概要(医科1)」(平成30年3月5日開催)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000198532.pdf

 前述・社会政策的視点から特に注目したいのは、外来診療の「ハイリスク妊産婦連携指導料1・2」の新設。「精神疾患を有する妊産婦に対して、産科、精神科、及び自治体の多職種が連携し、患者に外来診療を実施」した場合の評価だ。同12の違いは、1が産科、産婦人科を標榜する医療機関を対象にしたもので、2が精神科または心療内科を標榜する医療機関が対象になる。同1は1000点、2は750点の高評価。何れも直近、1年間の精神疾患の妊産婦に対する市町村等との「連携実績1件以上」が必要で、産科・産婦人科、精神科・心療内科の両方を標榜する医療機関が、同1・2の両方を算定することは出来ない。一医療機関の「自己完結」ではなく「連携」でなければ、届出は不可能ということだ。

 都心部の某産婦人科医院院長は、「実際にメンタル面の不安や問題を抱えた妊産婦は数多く来院する。精神疾患等を抱えた患者に対しての向精神薬の投与や療養上の指導等に対して、私たち産婦人科医、看護師・助産師等だけでは限界がある。精神科医や精神保健福祉士、公認心理師等との連携を進める報酬新設は、安心・安全な出産を進める意味から歓迎する」と高く評価する。同1・2とも出産後の養育支援が必要な場合は、患者の「説明と同意」の上で、地域の母子健康包括支援センターに相談し、情報提供を行うことも規定された。何れも詳細な算定要件があり小規模診療所にはハードルは高いが、孤立し易い母子の社会的な支援を強化する同1・2の新設は非常に意義深いもの。精神科や心療内科の先生方には、産科・産婦人科の先生方、市町村等との連携を進め、同2の届出を目指して頂きたいと考える。

精神疾患診療との親和性が高い「オンライン診療」の新設項目

 出典:厚生労働省診療報酬改定説明会「平成30年度診療報酬改定の概要(医科1)」(平成30年3月5日開催)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000198532.pdf

 今改定の大きな目玉として位置づけられた遠隔診療の一つ「オンライン診療」の新設項目は4つ。オンラインによる診察を評価した①オンライン診療料(70点・1カ月につき)に加え、②「オンライン医学管理料」(100点・同)③「在宅時医学総合管理料 オンライン在宅管理料」(100点・同)④「精神科在宅患者支援管理料 精神科オンライン在宅管理料」(100点・同)の3つの医学管理料はオンラインによる(③④は在宅での)医学管理が評価されるものだ。オンライン診療(以下、同診療)とは従来から実施されていた遠隔画像・病理診断等から更に前進し、「ICTを活用し医師と患者が離れた場所でありながら患者の状態を把握し、診療を行う」もので外来・訪問診療等の「対面による診療行為を補完する」ものとして位置づけられた。「問診→モニタリング→診察」までの一連の医療行為が改めて診療報酬で評価されたことになる。分り易く言うと、はオンラインで「診察を行う」ことへの評価で、②③④は「患者の状態を把握する」ことへの評価。①~④の何れも算定が可能なのは、「特定疾患療養管理料」、「小児科療養指導料」「難病指導管理料」等を算定する初診から6カ月以上が経過した患者になる。主に慢性疾患や難病、神経難病等の患者等であり、「地域包括診療料」、「認知症地域包括診療料」算定患者も対象になるのは「かかりつけ医機能」推進の視点からも注目される。

 何れも「対面診療と同診療を組み合わせ療養計画を作成し、同計画に基づき診療を行って、その内容を診療録に添付する」必要がある。3か月連続の算定は出来ないし、対面診療の間隔は3か月以上、空けてはならない。この他、一部の疾患を除いて「30分以内に診察出来る体制」や「オンライン診察の医師は対面診療を行っている医師と同じ」等の厳格な要件に基づき運用される。試験的に同診療を導入している医療機関等を除くと、すぐに要件をクリア出来る診療所は多くないと見られ、届出には時間がかかりそうだ。同診療を既に導入している開業医は、「慢性疾患・90日処方の場合、3か月に1度の対面診療だけだと医師・患者関係が希薄になり易い。テレビ電話と言えども毎月、“顔を見て対話”することで互いの信頼関係は醸成し易くなる。また、遠方からの受診が多い循環器・糖尿病等の専門医療機関は算定のメリットが大きい」と期待。「当該患者が“かかりつけ医”を近隣の診療所に変更する心配もなくなるし、3か月処方よりは3か月に2回の同診療によりレセプト件数も増え、医療経営への貢献度も高くなる」とも指摘する。

 3種類の管理料で精神科に適用されるのはで、新設の「精神科在宅患者支援管理料」を算定する在宅療養の精神疾患患者が対象だ。現実に同診療を実践している精神科系医療機関があるのか探していたら、筆者も委員として編集に参加する月刊「JAHMC」(〔公社〕日本医業経営コンサルタント協会発行)今年2月号で、2016年から同診療を実践する「新六本木クリニック」(東京都港区)の事例が報告されていた。2年間で同診療の実績は1000件を超え、院長への取材では「引きこもりの方や最初は外出困難なパニック障害の方」等への同診療の有効性が語られている。

 精神科医療の中心となるカウンセリングは遠隔診療との親和性が高いことから、今後、精神科系医療機関における同診療の導入や普及に期待したい。

「精神科救急入院料」届出病床に上限設定
認知症サポート医を評価した同サポート指導料新設

 2018年度から始まる第7次医療計画では「多様な精神疾患に対応出来る医療連携体制の構築」が謳われているが、今改定では同計画で位置づけられた多様な精神疾患の中でも①「精神科救急」、②「児童思春期精神疾患」、③「認知症」、④「うつ病」等の医療提供に関連する改正ポイントを紹介したい。

 出典:厚生労働省診療報酬改定説明会「平成30年度診療報酬改定の概要(医科1)」(平成30年3月5日開催)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000198532.pdf

 「精神科救急入院料1・2」に係る改正は、明らかに地域医療計画と連動したもので「地域で、より重症な精神疾患患者を受け入れる機能を明確化するよう」に要件の大幅な見直しを行った。「精神疾患に係る時間外、休日または深夜における診療実績や入院件数の実績」等が見直されたことに加え、詳細かつ複雑な施設基準が設定されているので、点数表を当たって頂きたい。同入院料のもう一つのトピックスは「届出可能な病床数に上限が設定された」こと。今改定から、当該病院の「精神病床数が300床以下の場合に同入院料届出病床は60床以下、300床以上の場合は、その2割以下」とすることが施設基準で規定された。ただ、「2018年3月31日現在で当該基準を超えて同入院料届出病床を有する病院は、現状の届出病床を維持出来る」が、この扱いは当然だろう。精神科救急病床の一見、強引にも思えるベッド・コントロールが始まった。更に、同入院料及び「精神科救急・合併症入院料」を算定する病棟の看護職員の手厚い看護配置を評価する「看護職員夜間配置加算」(1日につき55点)を新設。同加算の「夜勤看護配置基準は常時、“16対1”が必要だが、各病棟の夜勤看護職員数は最小必要数を超えた3人以上」でなければ算定出来ない。また、身体拘束等の「入院患者の行動制限を最小限にするため医師、看護師及び精神保健福祉士等で構成された委員会設置」が義務付けられた。「患者の行動制限最小化」と「看護職員の負担軽減」の一石二鳥を狙った新機軸だ。

 については「認知症治療病棟入院料」で従来の「夜間対応加算」が「入院日から30日を限度として1日84点」だったが、今改定から、入院日から「30日以内・84点」、「31日以上・40点」と当該患者の入院期間に応じて2段階に傾斜配分した。この改正により1カ月以上の入院でも算定出来るようになったが点数は半分以下。また、同加算の算定には前出・「夜勤看護職員配置加算」と同様に、患者の「行動制限最小化委員会」設置が新たに要件化された。認知症の夜間対応で起こりがちな身体拘束等の行動制限を減少させるのが目的だ。更に同入院料の包括範囲から「摂食機能療法が除外」されたのは、認知症の方への「摂食機能療法」を促すのが狙いと考えられる。医療計画と関わる改正としては、新オレンジ・プランで約500ヵ所の指定を目指す「認知症疾患医療センター」について、2017年から従前の「診療所型」に病院も加わり「連携型」と改称されたことから、「連携型」同センターが「かかりつけ医から紹介を受けて認知症鑑別診断・療養計画を行なった」場合の「認知症専門診断管理料1」算定が可能になった。点数は従来の「診療所型」と同じ500点で「基幹型」や「地域型」よりも200点低い点数設定となる。

 注目すべき新機軸は、同センターで「かかりつけ医と認知症サポート医との連携」を高評価した「認知症サポート指導料」(450点)新設だ。認知症サポート医が係る診療報酬新設は初めてのケース。更に既設の「認知症療養指導料」(350点)が今改定で3段階に再編され、1(350点)の当該患者への「認知症専門診断管理料」算定要件は従前と同じだが、2(300点)「認知症サポート指導料算定」、3(300点)「認知症サポート医自らが療養計画に基づく治療を行う」等、同サポート医との連携や、療養計画への参加を促す要件が導入された。平成29年末段階で同サポート医を全国で約5000人養成した厚生労働省は、平成32年には1万人に増やす数値目標を立てている。今後の改定でも同サポート医に関連した報酬項目は拡充されそうな予感だ。

「小児特定疾患カウンセリング料」は心療内科でも算定可能に

 前述に関して、医療機関を受診する発達障害者数が年々、増加し(平成26年度・約19.5万人)、発達障害の専門医療機関の初診は45%の医療機関で待機者が50人以上、51%の医療機関が待機日数3か月以上と回答していた(平成29年1月総務省報告書)。全国的に発達障害の疑われる児童の「初診待ち」長期化の改善が求められ、国も今年度から「発達障害専門医療機関ネットワーク構築事業」を開始する等、同支援事業に注力してきた。児童・思春期の精神疾患を有する患者への診療報酬として「児童・思春期精神科入院医療管理料」、「通院・在宅精神療法 20歳未満加算」、「通院・在宅精神療法 児童思春期専門管理加算」等が存在するが、小児科で精神疾患の診療を行った場合、2年間を限度として「小児特定疾患カウンセリング料」(月の1回目・400点、月の2回目・400点)の算定が可能だった。今改定から、児童思春期の精神疾患の診療機会を確保する視点から、同カウンセリング料算定が「心療内科を標榜する医療機関でも可能」になり、対象患者も「15歳未満→18歳未満」に拡大された。高評価であり、中高校生の患者等が多い都心部の心療内科クリニック等には朗報だろう。

 更に、原因不明の「自閉症スペクトラム障害」(ASD)等の患者に対する専門的なショートケア・プログラムの開発が進められてきたが、昨年10月の中医協では、「同プログラム参加前に無職だった者のうち参加後は約69.2%が、3年以内の就労に結びついた」とのエビデンスが報告された。効果が認められたことから、「一定の状態にある患者グループに対し、共通の目的で一定期間、計画的に提供される専門的なプログラム」に対し、「疾患別専門プログラム加算」(200点・1回につき)が新設された。精神科デイケアの区分の中に3時間のショートケアに対する報酬評価は現存するが、「社会生活機能の回復を目指し個々の患者に応じたプログラムに沿ってグループ毎に治療する」との制度の立て付けは、それと似通った部分が多いのかもしれない。当該プログラムを実施する医療機関を増やし、ASDの方の就労支援を促すのが狙いで、に係る2つの新機軸は前述したような社会政策的意味合いの強い改正と言えよう。

 ④「うつ病」等に関連した「認知療法・認知行動療法」(以下、同療法)については、従来、1~3(1日につき500点・420点・350点)の3段階の設定を1・2(480点・350点)の2段階に再編。従来の上位ランク1の「精神保健指定が行った場合の評価」を廃止し、今改定では、1「医師による場合」、2「医師と看護師が共同で行う場合」に見直された。従来の「1が2に、3が2」に移行した格好だが、従来2を算定していた医療機関は1への格上げで実質、60点のプラスになる。3は2年前の報酬改定で、「一定の知識・経験を有する専任看護師が一部を実施する形式の同療法」として新設されたが、専任看護師に係る施設基準では「適切な研修終了に加えて、認知行動療法に係る一定の実務経験」を求めていた。この基準が厳しく2016年6月審査分の届出実績はゼロで形骸化していた。

 新設項目の届出が0というのは厚生労働省の制度設計の失敗だが、それを反省し、従来3の要件にあった同療法を行う看護師の外来勤務経験等の削除や、研修対象者の範囲を定めた要件を削除する等の緩和を行なった。これら大胆な要件緩和により、同療法への看護師の参加が促され、2(従来3)の届出が増えれば、うつ病等の患者の受け皿は各地域で拡充されていくことが期待される。

 最後に、「働き方改革」の流れの中、多くの診療報酬項目で「医師等の従事者の常勤配置に関する要件の緩和」が実施されたが、一般病院だけでなく精神科に関連した8項目でも医師に関して、「週3日以上かつ週24時間以上の勤務を行っている複数の非常勤職員を組み合わせた常勤換算でも配置可能」と改正された。それらの緩和項目は重要と思われるので、改めてチェック頂きたいと思う。

■医師等の医療従事者の柔軟な働き方に対応すべく常勤配置要件の緩和が行なわれた8つの精神科に関連した診療報酬項目

  • 「重度アルコール依存症入院医療管理加算」
  • 「摂食障害入院医療管理加算」
  • 「認知症ケア加算」
  • 「通院・在宅精神療法 児童思春期精神科専門管理加算」
  • 「救急患者精神科継続支援料」
  • 「抗精神病特定薬剤治療指導管理料 治療抵抗性統合失調症治療指導管理料」
  • 「医療保護入院等診療料」
  • 「精神科在宅患者支援管理料」
掲載している情報は、取材時もしくは掲載時のものです。
【掲載】2018年05月18日