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行動制限最小化に関する実践・事例報告

終わりに

 行動制限を最小化にするために、日々変化する患者の状況を、早い段階で正しくつかむ必要があり、行動制限を最小化にしようとする意識をもったなかでの情報の共有が重要となる。
 現場においては、「行動制限を減らすためにはどうすればいいのか?」と自問自答する日々が繰り返される。看護者の意識が変わらなければ隔離・拘束は変わらないという一つの大きな問題にぶつかる。「看護者の意識」とは、いわゆる「看護観」や「職業倫理」などが関係してくる。患者に向かい合う看護者の姿勢が重要となる。その「看護者の意識」とは、どのようにコントロールすればいいのだろうか。隔離・拘束を含む患者処遇は病棟文化の影響を避けることができないという事実もある。それらのバランスをとるには、行動制限に関する看護者に共有された意識が重要となってくる。
 事例を通してわかってきたことは、個々の看護者の思い込みを捨て、発想を変えることを意識して患者との協働を追求することで治療者の意識は変化する。
 患者に対する陰性感情の表出を最小限にとどめ、患者と協働してパートナーシップのもとに問題に取り組む看護者の意識が解決の糸口になる。スタッフの先入観や不安を軽減したなかで客観的にアセスメントする必要がある。患者への陰性感情をもってしまってから、その関係性を修正するのは非常に困難となる。早い時期に看護者の患者に対する感情の共有が大切である。それによって前向きに考えることができ、何が原因で問題行動が起こったのかをアセスメントして対処方法を考える事ができる。チームでの患者理解とスタッフ間の相互理解を深め、陰性感情を処理して統一した関わりが重要となる。実際の看護場面では、心理的距離が近くなる傾向にあるので、患者の気持ちがよくわかる反面、患者の嫌なところも見えてしまうことも理解しておかなければならない。
 行動制限や身体拘束は、患者の人権と安全の両立という、精神医療に内在する矛盾、困難を象徴する課題である。しかし、繰り返される行動制限も現実的には存在しているのも事実である。今回の検討を踏まえ、行動制限最小化を考えるにあたり、患者自身および他の患者が被る不利益などについても、あらかじめ十分な検討をし、行動制限最小化の取り組みを続けていきたいと考える。

文献

  1. 天賀谷隆/遠藤淑美/末安民生/永井優子/吉浜文洋:実践精神科看護テキスト10 行動制限最小化看護
  2. 吉浜文洋:特集 行動制限最小化のための技術PartV 行動制限最小化のための変革 患者をコントロールする病棟文化から、患者と協働する病棟文化へ.精神科看護 34(3):16-22,2007
  3. 八田耕太郎:日本総合病院精神医学会治療指針3 「身体拘束・隔離の指針」10,2006
  4. 柳澤ひさみ:特集 行動制限最小化のための技術PartV客観的なアセスメントから始まった試み 患者と一緒に目標を立てる.精神科看護 34(3):23-29,2007
  5. 国立精神・神経センター精神保健研究所「精神保健福祉資料調査」630調査の結果
     HP:http://www.ncnp.go.jp/nimh/keikaku/vision/data.html#a1
  6. 西本映子:陰性感情を抱きやすい患者との関わり.日本精神科看護学会誌 47(2):148-151,2004
  7. 奥谷広行:陰性感情から患者看護者関係成立へ.日本精神科看護学会誌 47(1):173-176,2004
  8. 山本香奈芽:患者に抱く陰性感情に対してのコーピング.日本精神科看護学会誌 47(1):484-487,2004
  9. 中原かすみ:陰性感情の転移と行動障害の変化.日本精神科看護学会誌 50(1):276-277,2007
  10. 大塚敬治:看護師が陰性感情を抱いた問題行動を繰り返す患者への援助
    日本精神科看護学会誌 50(1):142-143,2007
  11. 木村奈津恵:スタッフが陰性感情をもった患者への患者背景の理解と看護者のストレス軽減の関連性について
    日本精神科看護学会誌 51(1):258-259,2008
  12. 梅原弥生:看護者が陰性感情を抱いている患者との関係の再構築
    日本精神科看護学会誌 51(1):350-351,2008
  13. 長岡千恵子:精神科閉鎖病棟の看護師が抱く陰性感情の実態調査
    日本精神科看護学会誌 51(1):254-255,2008
  14. 大谷昌功:暴力を受けた看護師の陰性感情への対処方法の実態
    日本精神科看護学会誌 51(1):348-349,2008
  15. 田村晃一:精神科看護者が患者に抱く陰性感情およびコーピング行動.日本精神科看護学会誌 ,2009
  16. 四釜武史:患者理解をめざしたかかわり.日本精神科看護学会誌 ,2009
  17. 今村慎一朗:看護場面の再構成による患者-看護者関係の構築.日本精神科看護学会誌 ,2009
  18. 冠埼香代子:精神看護における看護師の抱く陰性感情の実態.日本精神科看護学会誌 ,2009
  19. 三木明子:精神科看護師が抱く陰性感情が患者対応に及ぼす影響.日本精神科看護学会誌 ,2009
  20. 二神秀樹:精神科保護室入室中患者の看護を考える--面接調査を実施して
    日本精神科看護学会誌 47(2):202-205,2004