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第3回ネットワークの中で気付いたソーシャルワーカーの仕事

お風呂の水汲みがソーシャルワーカーの仕事か?

 ある時、所内の保健婦さんから、ヘルパーと共同で入浴サービスをしているお年寄りがいるので、家庭訪問に同行しないかと誘われました。私は喜び勇んで出かけました。

 保健婦1人とヘルパー2人が諸道具を持ち込み、エプロン姿も甲斐甲斐しく、お年寄りの衣服をとり、血圧を測定し、簡易浴槽を畳の上に準備し、お湯を張り、お年寄りをゆっくりとお湯につからせました。 お年寄りは気持ちよさそうに目をつぶり、「ありがとう」と感謝し、家人もまた「助かりますわ」と心から述べ、そんな在宅ケアのすばらしい場面が展開されたのです。  その場にいて私もまた、お年寄りやその介護者が納得する様子に満足感を与えられたものです。 しかし、帰路についた時、ふとソーシャルワーカーである自分は一体何をしたのか、と考えてしまったのです。  実際、入浴の場面で私のしたことは、お湯を汲んで、床を拭いて、散らばった衣類やタオルを片付けて・・・。

  しかし、これらのことはベテランの精神科ソーシャルワーカーでなくとも誰もがやれることです。 一体あのお年寄りにとって、ソーシャルワーカー本来の仕事とは何だったのかと考え込んでしまいました。

連絡・記録係だけではないはず

 また同じ頃のこと、たまたま私が受けた相談の電話がありました。内容は「ご飯を食べなくなったので、困って近くの精神病院に入院をお願いしたら、保健所に相談しなさいと言われた。」という、障害のある母親を抱えた娘さんの訴えでした。 聞くと、母親は80才過ぎで、目が見えず、耳もほとんど聴こえないで、一日中布団に座って大声で叫び続けているというのです。 面接のためすぐに来所してもらった娘さんから、さらに詳しく聴取した内容により、次の日には精神科嘱託医、保健婦、精神保健相談員でチーム訪問を行うことにしました。

 明くる日の訪問で、本人宅の近くまで来ると、すでに大きな叫び声が聞こえました。拒食や暴力があり、被害妄想的であったため、次の日から2人の保健婦が毎日訪問することになりました。その後の数週間は、医師も数回同行しています。

 他人が側に近寄ると噛みつくこともありました。ある日、保健婦が彼女の入れ歯を素早く抜き取り、すかさず薬を飲ませることに成功しました。 そして実に不思議なことに、この老女は入れ歯を抜き取られた途端におとなしくなってしまったのです。その後、内科病院へ一時入院しましたが、最後まで在宅で介護されました。

 さて、この間私はたった2回だけ同行訪問を行い、その場の記録を書いたに過ぎません。この老人に直接対応していたのは医師と保健婦、つまり医療と看護であって、ソーシャルワーカーの私は連絡のための記録をとっていたに過ぎないのです。地域保健福祉の中で、要介護老人に対する精神科ソーシャルワーカーの専門性とは一体何なのかと、先の入浴サービスの現場と同じく再び悩んだことでした。