Home > 経営管理講座 「地域医療構想」と「かかりつけ医」制度の陥穽〜「財務省」視点から医療制度を検証する (PAGE 1)

「地域医療構想」と「かかりつけ医」制度の陥穽〜「財務省」視点から医療制度を検証する 


医療ジャーナリスト:冨井 淑夫

「地域医療構想」に対する公正な政策評価が必要

 病院には「地域医療構想」、診療所や調剤薬局に対しては「かかりつけ医」、「かかりつけ薬局」が現在、医療業界で最も関心の高いテーマとなっているようだ。

 これらの政策は紛れもなく、国が従来の医療提供体制に規制をかけてコントロールを強めようとするもの。しかし医療業界からは、これら施策に対して、懐疑的な声は余り聞こえてこないのが不思議。2016年、筆者は幾つかの医療関連学会に参加し、「地域医療構想」(以下、同構想)をテーマにしたセミナーやシンポジウムを数多く、取材してきた。

 有識者からの発言の多くは、今後の少子高齢化や人口減少社会に向けてのマクロ的な現状分析や理念論に留まり、同構想の進展が実際に、地域医療の現場へどんな影響を及ぼすのかという、その内実に迫る議論が乏しかったように感じる。厚生労働省の施策に追随するのではなく、「患者や国民側に立っての正しい政策評価」が、地域医療を守る立場の医療関係者、大学教授等の有識者、更に医療ジャーナリズムの務めと思われるからだ。

 一方、医療・介護を中心とした社会保障政策に関して、近年、財務省の発言力や存在感がとみに増してきたように感じてならない。同省が2015年、2016年と次々に打ち出した社会保障制度改革案や、同省の付属研究機関である「財政総合政策研究所」(以下、財総研)の「医療介護に関する研究会報告」(2016年5月31日)等の内容をつぶさに熟読すると、財務省の狙いが少しずつ見えて来る。(何れもホームページで検索可能)

 安倍政権が2012年の民主党政権時代の三党合意・「社会保障と税の一体改革」に基づく消費税増税を2度に亘って先送りにしたことで、財政規律や社会保障費削減に執念を燃やす財務省の医療政策介入へのアクセルが、一段と強まった印象がある。

 2008年に始まり現在、第二期が進行中の「医療費適正化計画」(以下、同計画)も財務省の意向が色濃く反映されたプランであり、同構想は同計画と連動した施策であることも、多くの専門家により指摘されている(同計画については後述)。

 医療政策においても財務省の「医療費をコントロールする」ことを目指した急進的な施策に対して、厚生労働省が「制度設計の過程でソフトランディングし、具体化する」構図が見えて来る。ここからは、同構想及び「かかりつけ医」政策の二点に絞り、財務省関係者、元厚生官僚等の事情通、専門家等への取材で得た情報を集約しながら、今後の更なる制度改革の内容、医療現場に与える影響等を予測したいと思う。