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「地域医療ビジョン」と「病床機能報告制度」で各都道府県の医療はどう変わる!


医療ジャーナリスト:冨井 淑夫

2014年からスタートした報告制度 ビジョン策定は2015年度から本格開始

 2012年8月の「社会保障制度改革国民会議」の報告書で、バランスの取れた医療機能の分化と連携を推進するために、各都道府県で「地域医療ビジョン」(以下・同ビジョン)を策定していく方向性が打ち出された。同ビジョン策定の前提として、厚生労働省では「病床機能報告制度」(以下・報告制度)の導入を決定した。報告制度は、「医療機関が担っている医療機能を各都道府県に報告する」仕組みを導入することで、報告を求める具体的な内容に関しては、医療提供者や利用者の意見を踏まえながら、社会保障審議会医療部会(以下・同部会)の下に設ける検討会で検討された。2012年11月に行われたその「第一回病床機能情報の報告・提供の具体的なあり方に関する検討会」(以下・同検討会)によると、各医療機関は「急性期、亜急性期、回復期、その他、主として担っている医療機能の内容」、更に医療機能毎に「提供している医療の機能や特性、人的な体制、構造設備等の病床機能についても併せて報告」することとし、都道府県は「各医療機関からの報告の内容を患者・住民に分かり易い形で公表」するとしている。
 同国民会議報告書で、「次期医療計画の策定時期である2018年を待たずに速やかに策定し、直ちに実行に移していくことが望ましい」と述べられているように、当初予定されていた2017年度中からの開始が前倒しとなった。2014年度から都道府県は報告制度を通じて、地域の医療機関が担っている医療機能の現状を把握し、それを踏まえて同ビジョンに関するガイドラインを策定。2014年の第六次医療法改正で法律案が提出され、2015年度からガイドラインに基づき、各都道府県が本格的に同ビジョンを策定していく流れで、地域医療計画にも追記された。同ビジョンの内容は、①2025年の医療需要(入院・外来別・疾患別患者数等)②2025年に目指すべき医療提供体制(二次医療圏ごとの医療機能別必要量・在宅医療と地域包括ケアについては市町村ごとの同必要量)③目指すべき医療提供体制を実現するための施策―が3本柱となる。
 同ビジョンの従来になかった点は、二次医療圏毎の医療機能別必要量や患者数等の医療需要について数値目標を立て、各都道府県は目標に向かって取り組むことが必要になる。一般企業で導入されている営業ノルマのような発想で、行政側のコントロールが強まることに対して、医療提供者側の戸惑いも予想される。
 2013年10月に開催された同医療部会では、同ビジョンの運用に関して、厚生労働省から2案のたたき台が示された。一つ目の案は「医療法上の一般病床・療養病床について、現行の一般病床・療養病床等の基準病床数に加えて、報告制度の医療機能毎に区分し、各医療機能の基準病床数を定める」というもの。その上で各医療機能の既存病床が基準病床数を超えている場合には、当該医療機能の病床の新規開設・増床は現行の仕組みと同様に公的医療機関の場合は許可しない上に、一般医療機関の場合は勧告される。この案に関しては規制が強すぎるということで、多くの医療提供者側委員から反発の声が上がった。二つ目の案は「現在の医療法上の病床区分は変えずに、報告制度の医療機能について、今後、現状を把握し、その結果を分析した上で、定量的な基準を定めて、各医療機能の必要な病床数へと誘導していく」というもの。この案に関しては「診療報酬と財政支援の仕組みとを適切に組み合わせて、必要な医療機能の病床数へ誘導していくものとする」と、診療報酬と新たな財政支援による経済誘導が示唆されている。この案に関しても個々の医療機関の自主的な運営が損なわれるという点から、反対意見が多かった。同ビジョンと報告制度に関する議論は同検討会の検討結果を踏まえながら、今後、議論が深められていく。