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2016年診療報酬改定を検証する〜「目玉」部分をポイント解説


医療ジャーナリスト:冨井 淑夫

認知症合併症を受け入れる一般病院への重点評価

 「地域包括ケア・システムの推進」と「医療機関の機能分化・強化、連携」の視点が鮮明となった2016年診療報酬改定。ポイント解説を書くに当たり、限られたスペースで全ての項目を網羅することは難しい。本サイトが精神科を主体とすることから、主に入院医療を中心に、精神科以外を対象とするものであっても精神医療や認知症等の関連項目と、精神科・認知症に係る診療報酬項目に絞り執筆させて頂く。体系的に整理したものではなく、専門家等のコメントも交えながら、重要と思われる個別項目をアトランダムに紹介していきたい。まず急性期一般病院において、合併症を有する認知症または精神疾患患者の積極的な受け入れを推し進めるための新機軸が幾つか導入されたことから指摘したい。
 一般病棟に導入されている「重症度、医療・看護必要度」(同必要度に略)要件の見直しが行なわれ、現行のA得点2点以上、かつB得点3点以上」の評価項目が2016年改定では「①A得点2点以上、かつB得点3点以上 ②A得点3点以上 ③C得点1点以上の何れかの基準を満たすもの」に改められた。注目したいのは一般病棟のB項目(患者の状況等)で、2つの項目(9・起き上がり 10・座位保持)が削除。替わりに(14・危険行動 15・診療・療養上の指示が通じる)が入ってきたこと。この2項目に関しては従来から、「ハイケアユニット入院医療管理料」における同必要度の評価項目に採用されていたが、「7対1」入院基本料病棟や、「特定集中治療室管理料」病棟の評価項目にも導入。B項目に関してはハイケアユニット用、一般病棟用、ICU用の全てが評価方法の異なる仕組みであったが、類似の状態を評価する項目が多く、項目数にも差があることから、統一して簡素化が図られた。ハイケアユニットはB項目から(1・床上安静の指示 2・どちらかの手を胸元まで持ち上げられる)が削除。「10対1」病棟の重症患者に対しては、見直された同必要度に該当する患者割合に応じて、「看護必要度加算」の評価引き上げで対応する。
 全ての急性期病棟のB項目に前出「危険行動」等が入って来たのは、認知症やせん妄を合併した救急患者に急性期医療機関への受け入れを忌避される傾向があったことや、看護提供頻度が高かったこと等による。今後、精神科入院患者の地域移行が進められていく中で、認知症の方や精神疾患患者の急性増悪に対して、救急医療機関等で積極的に受け入れていくための政策誘導である。ある救急病院の事務長は「認知症患者を数多く受け入れて来た病院は、B項目で評価され、経営的に恩恵を受けるだろう」と指摘する。
 同様の考え方で新設されたのが、「認知症ケア加算」。「合併症を有する認知症患者のケア」が評価されるものだが、精神科を除く殆ど全ての入院料、入院基本料、入院医療管理料に加算される。同加算は1と2の二段階では入院期間「14日までは150点」と高評価の一方、「15日を過ぎると30点」と大きく下がる。2は1と比較すると厳格な要件はないものの「14日までが30点」、「15日以降は10点」と顕著に差が付けられている。
 従来、急性期の一般病院では「問題行動を抱えた認知症入院患者の受け入れ」には消極的だった。理由の一つとして、転倒や他害といった事故発生のリスクがあるからだ。認知症合併症患者の治療やケアを「前進させる」意味で、同加算は画期的な項目の一つと評価出来る。「認知症高齢者の日常生活自立度判定基準」のランクⅢ以上に該当する患者が対象で、「身体拘束」を実施した日は所定点数の「10分の6」に減額される。
 悩ましいのは、この「身体拘束」に関する対応だ。の施設基準では「何れも専任で常勤の医師、看護師、精神保健福祉士(PSW)または社会福祉士の三者による認知症ケアチームの設置」が条件。医師は「認知症に十分な経験と知識」があり、看護師は「認知症看護に従事した経験を有し、適切な研修を修了している」こと。PSW・社会福祉士は「認知症患者の退院調整の経験」があることを求められる。そして、このチームは「身体的拘束の実施基準を含めた認知症ケアに関する手順書を作成し、保険医療機関内に配布し活用する」と明記されている。手順書に関する規定は同加算2の場合も同様。ある経験豊富な看護師は、「一般病院は精神科病院とは異なり、身体拘束の法令規定等がないのに、同手順書に関しては各病院で独自に作成・運用するようにも読み取れる。しかし、厚生労働省が介護施設で導入されている“身体拘束の手引き”のようなガイドラインを示してくれなければ、現場で混乱を招くのではないか」と、公的な指針がないことに不安を隠さない。今後の通知等によって、これらの課題は徐々に明らかになるようにも思われる。