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NLP・コーチングによる患者満足度向上への道
〜 実践心理学の医療機関への応用とその効果 〜


村田 小百合先生
(聞き手:医療ジャーナリスト:冨井 淑夫)

 「対話」による自己実現や目標達成を図る技術である「コーチング」は、近年、医療機関でも一つの人材開発技法として職員教育等で取り入れられるようになってきた。またアメリカの3人の心理療法家のコミュニケーション技法を体系化したNLP(Neuro-Linguistic-Programming=神経言語プログラミング)が注目を浴び始めている。このNLPは実際のセラピストの心理療法から発生しているため医療機関のスタッフ教育に有効であるが、現在ではビジネスや教育、スポーツなどの各分野で応用される形で発展を遂げてきている。このNLPの考え方やコーチング技法を、職員の能力開発やコミュニケーション技術・患者満足度向上等に応用し、成果を上げている医療機関が増えてきている。どのようなプロセスで人は行動変容を遂げ、改善をもたらすことが出来るのか?NLP・コーチング教育の第一人者である村田小百合先生にお話を聴いた。

医療に携わる者の本当の意図(ありたい姿)を引き出すNLPと
目標達成へ人の力を最大限に「引き出す」コーチング

―― NLPやコーチング技術を学ぼうとする医療関係者も増えてきましたが、その理由はなぜでしょうか?

村田:  厚生労働省が『患者サービス』の重要性を明言し始めたのは今から27年前となります。そして、ここ10〜15年前から「接遇」という部分では、多くの医療機関では教育をされてきたのではないかと思います。接遇によって基本的な満足を満たされた患者様は、次の多様な期待のステージへ移行し始めたと言えます。そこでこのような患者様との人間関係の確立に不可欠なものが、コミュニケーションであるのではないかと思います。特に傾聴力、分かりやすい説明力、そして忘れてはならないのが柔軟性や共感性という感性の部分があります。しかし、これらの能力を発揮するにあたりさらに重要視されているのが、職員自らが持つ内的モチベーション「やりたい力」にあるのではないかと思います。つまり患者様満足を高めるためには、職員自らが働く幸福感や充実感をもって業務に当たることが最適な患者サービスに繋がるという視点です。この部分に気づき始められた医療機関様が、人材育成の手法としてNLPやコーチングなどにシフトされているのだと感じています。私も、医療スタッフの患者様への優しい想い、医療現場における自己成長への内なる欲求を引き出し、満たしていくための方法として、言語学・心理学を応用したNLP(神経言語プログラミング)や認知心理学をベースとしたアンガーマネジメントという手法はとても効果的だと思い、昨今は医療機関のみなさまにご紹介することが増えてきました。つまり医療スタッフ自身もまだ気づいていない「医療に携わる本当の意味」(他人には見えないことから潜在能力と呼びます)など心の中にある能力を引き出すためにNLPを使うことがあります。そこから医療プロとして期待される業務目標を達成していくための力(周囲にも見えてわかることから顕在能力と呼びます)をコーチングによって能力開発していくというイメージです。医療スタッフだけでなく、人は誰でも様々なストレスにさらされたり、自分自身の躊躇や葛藤と向き合っています。様々な精神的な状態に合わせて、適切な心理学的な手法を使ってサポートしていくことが医療スタッフの教育場面にも求められてきているのだと思います。どのような精神的状態の時に、NLPやコーチング、アンガーマネジメントを扱ってメンタルケアしているのかイメージ図として表してみました。

NLPなどを扱ったメンタルケアイメージ図

―― 患者様とのコミュニケーション・スキル向上に役立てる場合、NLPやコーチングは具体的にはどのようなアプローチになるのでしょうか?

村田:  まず目標(ありたい姿)や「目標達成を超えた本来の意図」はどのようなものか、「周囲に対してどのような良い影響」を与えていくのかを最初にゴール設定するのは、NLPであってもコーチングであっても同じです。
 日本ではうつ病の罹患者が10万人を超え、その方々は神経回路がネガティブに反応しやすいということが、医学的にも解明されているとのニュース報道がありました。
 例えば、人が精神的に元気な状態をゼロ(0)という数値で表した場合、同じ組織で仕事をする全員が元気な状態(ゼロ地点)にいるわけではなく、中にはマイナス面になる精神面で不安定さを抱えていたり、心が脆弱化している人もいます。そうしたマイナス地点にある人達に対して、「氣」を「元に戻す」つまり「元気」にすることにNLPは効果を発揮します。というのは、NLPには“なぜ自分がネガティブな反応をしてしまうのか?”、“マイナス思考に陥ってしまうのか?”と思考のクセやプロセスを考えるためのツールや、ポジティブに向かうための具体的なワークが数多く含まれているからです。将来にわたって心穏やかに精神的に健康に過ごすためには、どのように感情や行動をコントロールすることが自分に最も適するのかを柔軟に選択していくことができます。
 そしてゼロ地点に戻った方々を、プラス方向へコーチングによって目標達成に導くと、組織としてより大きな成果が得られると考えています。目標達成に導くためにその人が持っている力を最大限に「引き出す」ことはコーチングの要諦になります。具体的には「目標をより意欲的に達成する」には何をすれば良いのか、時期や方法などはすべて質問により相手が持っている答えをコーチング技法により掘り起こしていきます。働く人たちの充実感を高め、組織に活力を与えるためにも、NLPやコーチングのアプローチは非常に効果があると考えています。