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"大きく、変わる!"相続税・贈与税と医療機関の事業承継


税理士・ 京都産業大学経営学部非常勤講師  船本 智睦先生
(聞き手:医療ジャーナリスト:冨井 淑夫)

 2013年3月に「所得税法等の一部を改正する法律」が公布され、相続税法及び租税特別措置法の一部が改正。それに基づき2015年1月以後、「相続もしくは遺贈または贈与により取得する財産に係る相続税または贈与税」について改正法が適用されることになりました。今回の税制改正の重要ポイント、更に精神科病院を中心とした医療法人病院、今後の「地域包括ケア・システム」推進の中での事業承継のあり方について、専門家である船本智睦先生にお話を伺いました。

多くの土地を所有する医療機関の先生方には影響の大きな改正

―― 2015年1月から相続税・贈与税の改正が実施されましたが、改正の目的と重要なポイントについて教えて下さい。

船本:  少子高齢化の進展に伴い生産年齢人口が、今後、減少することは避けられませんが、逆に老年人口の割合が高くなるに伴って、国民全体の給与所得は減少します。日本人の所得体系の変化に合わせて、所得税、法人税、相続税等の税の考え方を抜本的に見直していくと言うのが、財務省の基本的な考え方だと思います。その一つを挙げると資産税は不動産を中心とした資産に課税するのが基本で、種々のデータを見ても高齢者が不動産等の資産を有している割合の高いのが明らかなので、保有財産に適正な課税をするのは当然の流れであり、それを受けて2015年から相続税、贈与税等の資産税が大きく改正されることになったのです。基本的な仕組み自体は変わらないのですが、「相続財産に課税する」前段階での課税の基礎控除を変えるのが第一。以前は「遺産に係る基礎控除」が全体で5000万円だったのが、3000万円に引き下げられたのです。従来は法定相続人が仮に3名いたとして、1人に1000万円の基礎控除が有り、〔5000万円+(1000万円×3)〕=8000万円が遺産にかかる控除額です。これが改正後は基礎控除が1人に600万円と下がり、〔3000万円+(600万円×3)〕=4800万円になります。要するに相続人が3人の場合は、課税価額が実質3200万円も上がってしまうことを認識する必要があります。これが今回の相続税改正の最も大きなポイントと言って良いでしょう。
 同時に従来は相続税の最高税率は50%だったのが、55%に引き上げられるという改正も行われました。加えて「小規模宅地等の特例」として、居住用の宅地等の限度面積が240㎡だったのが、330㎡まで拡大されました。減額割合80%はこれまでとは変わりません。ただ所有されている宅地の評価額が高ければ高いほど、引き下げ幅は大きくなります。

―― 基礎控除が引き下げられ、実質的に増税になったとしても、一方で土地評価額の高い宅地を所有されている開業医の先生方等は、恩恵を受ける可能性も出て来るわけですね。

船本:  仮に出資持分のある医療法人で幅広く土地を所有されており、不動産に対する評価益がついているような場合は対象となりますので、従来の資産管理のやり方を抜本的に見直す必要性も出てきます。土地評価額を下げるような手立てや対策を、出来るだけ早いタイミングで実行していくことが求められます。相続財産の中でも、不動産が一番大きなウェイトを占めることが多いので、多くの土地を所有されている医療機関の先生方にとっては、極めて影響の大きな改正と言えるでしょう。
 PDF【国税庁】相続税及び贈与税の税制改正のあらまし(PDF:6.4MB)

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