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「求人広報」の戦略的展開〜新時代のスタッフ採用手法を探る


 病院の形態や規模を問わず、多くの医療機関にとって医療専門職の確保は常に苦労の多い課題であり、特に病院機能の中心的役割を担う医師と看護師の求人は、病院経営者や人事担当者の最も頭を悩ませるところであると思われる。看護師の場合は結婚・出産・親の介護を理由とした離職は常に想定されるし、地域の他の医療機関との人材獲得競争に打ち勝つためには、労働環境の改善に加えて、独自の看護師採用手法の確立が求められる。
 近年はインターネットを有効に活用した求人広報が進化してきたが、求人用チラシやポスター、パンフレット、リクルート用プロモーションビデオ(DVD)等の活用においても、いかにして求職中の医師や看護師を引きつける魅力的な媒体を作れるのかという戦略が求められる。
 筆者は平成24年11月2,3日の両日、長野市で開催された「HISフォーラム2012」を取材する機会を得た。同フォーラムは年に1回、全国各地で開催地域を変えて行われており、NPO法人「日本HIS研究センター」が主催するもの。今回特に注目したのは、「求人広報」に特化した形で戦略的な取り組みを実行し、実際に看護師や医師のリクルートに成功した2つの病院の事例だった。それらの取り組みを紹介しながら、効果的な「求人広報」のあり方を考えてみる。最初の2つの事例は、平成24年11月段階の情報であることは付け加えておきたい。

独自の看護師求人用パンフレットで
エントリー数3倍、新規採用増に結実

 医療法人社団三成会・新百合ヶ丘総合病院は、平成24年8月、神奈川県川崎市に高度急性期医療を担う総合病院としてオープンした。同院の母体となるのは、福島県郡山市の総合南東北病院を中心に日本全国81ヶ所で医療・介護・福祉サービスを展開する南東北グループ。川崎市北部医療圏の病床不足により、市が救急病院を誘致すべく全国公募し、このたび南東北グループが選ばれ病院を運営することとなった。新百合ヶ丘総合病院人財開発部・小嶋佳里奈さんの発表から、ユニークな看護職員の「求人広報」を紹介する。
 同院の人財開発部は看護職員のリクルートに特化した部門として設置され、現在、8名のスタッフが仕事に携わっている。看護師の教育や新規採用、求人広報の促進や内定者のフォロー等を主な業務にしているという。同院では従来の病院の発想では捉えられない型破りな求人用パンフレットを制作した。
 小嶋さんは「独自のパンフレット制作の目的として、数多くある病院の中から、当院のことをまず“知ってもらう”きっかけとして、更には“知ってもらう”だけではなく、“選択し”、“入職してもらえる”ものを目指しました。そのためには、新卒の看護学生から、まずは“手に取ってもらえる”病院らしくないパンフレットづくりを検討したのです」と強調する。VOL1は新卒の看護学生にアッピールするように、誰でもが手に取ってもらえるファッション雑誌のイメージで、表紙には可愛らしい女の子の写真を使用。未だ病院のオープン前だったので、モデルの女の子が女性へと成長していく過程と重ね、これから新しく出来る病院の「成長」を表現したという。そして今回、病院が完成した段階で制作したVOL3では、成長した大人の女性のモノクロームの写真を表紙に採用した(写真)。

写真

 内容の中には、ポップで遊び心のある看護学生向けのページと、看護師の資格取得者で離職中の看護師に向けた文章で詳しく伝えるページが共存し、幅広い世代の看護師にアッピール出来るように工夫されている。病院の周辺環境をイメージしやすいように、スタッフは街に出て撮影した写真を使用。求職者にとって関心事である研修システムや福利厚生については、数ページに亘り詳細に紹介されている。
 グループ行事に取り組むスタッフの表情や、職員寮についても掲載されているが、病院の姿が看護師の親御さん達に理解されるような編集の工夫が目につく。この看護師求人用パンフレットは、自主開催している説明会や就職フェア、資料請求された方や、看護学校に配布された。1か月平均のエントリー数は、VOl1を制作する前と後とで3倍に増加。パンフレットの効果だけでなく、総合的なリクルート活動の結果と思われるが、説明会への参加者数402名、応募者数257名、実際に入職に至った看護師が105名という形で結実した。看護師の紹介会社に頼ることなく、105名の入職に結びつけたという。
 広報や編集が本業ではない筈の人財開発部のスタッフが、これだけレベルの高いパンフレットを自ら編集制作し、戦略的に活用しているのには驚きを隠せない。