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(事例研究レポート)人材開発イノベーション
  〜「医療の質」向上につなげる教育・研修技法

人材の定着はコンピテンシーをベースにした、教育・育成システムなしには不可能

 医療機関が良質の人材確保・定着を図るためには、人事労務面での環境整備に加えて人材の育成・能力開発を車の“両輪”として捉えていく必要がある。医師・看護師の育成は人材の定着があってこそ成り立つものだが、人材の定着もコンピテンシーをベースとした教育・育成システムなしには不可能な時代となっている。 近年、一般産業界で注目されるようになってきたコンピテンシー(成果を上げるための行動特性)は、企業が職員に求める行動規範の“見える化”と言って良いだろう。
 近年、一般産業界の景気低迷により、病院も事務系の職員は比較的、良質の人材を採用し易くなってきてはいる。病院事務職の業務も高度に専門化・機能分化する中で、唯一の無資格者である事務系職員のキャリア・パス体系化と、ジョブ・ローテーションの構築・運用が喫緊の課題となってきた。キャリア形成を考慮した教育・能力開発の仕組みを作ることは大事だが、また一方では、年月を費やして育成した幹部候補生が(より高待遇な)他の病院に流れてしまうというジレンマもある。この他、病院の場合は理学療法士、薬剤師、検査技師等、人材育成・定着に関しては専門職ごとに多様に複雑な課題があり、各々に対応策を考えていかなければならないことが、専門職種の集合体である病院の難しいところだ。例えば労働・雇用環境は各専門職を取り巻く制度や教育システムの変更によって、左右される傾向が強い。例えば2006年から薬剤師の6年制教育が導入されたことにより、薬剤師を取り巻く労働市場が大きな変化を遂げたように。
 次のステップとして、能力開発の段階が終了し一定の能力が備わったと考えられる職員に対して、人事的な処遇とどう結びつけるかという問題がある。そのために前述したキャリア・パスの体系化が必携になるのだが、病院独自で職種ごとの「能力開発ガイドライン」のような標準化した指標が求められる。しかし、そうした指標を作れる程の病院は、未だ極めて少数派に過ぎない。ただ看護部門に限って見れば、キャリア・パス整備は各病院でかなり進んできたように思われる。
 医療機関の人材開発は極めて奥が深く、幅の広いテーマである。教育・研修だけでなく、職能給制度の導入等、賃金体系のあり方も同時に検討していく必要がある。
 次項では筆者がこれまでに取材した事例研究レポートに移りたいが、ここでは部門別ではなく多職種協働による取り組みに絞り、他の病院でも適用出来そうな事例を幾つか紹介したい。病院名は匿名で若干の脚色を加えていることをお断りしておく。

94(13.09.20)