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医療・福祉経営アイデア図鑑
  〜ユニークな創意・くふうが医療・福祉施設を活性化させる

“現場発想”で付加価値サービスを創造

 近年の政府による社会保障費の抑制政策等によって、全国各地の多くの医療機関や社会福祉施設が低空飛行を余儀なくされる中で、財務基盤の脆弱化や組織の活力低下により、積極経営や新規事業への「挑戦」に踏み出せない施設も少なくない。ただ医療や福祉の現場では、そうした沈滞ムードを打ち破るべく、ユニークなアイデアや新機軸導入によって、経営の活性化や患者・利用者サービスの向上、信頼関係構築等に結実した事例も数多く見られる。ここでは大きなコストや時間を要せずとも、“ささやか”な創意・くふうによって、新たな付加価値サービスの創造に成功した事例を中心に取り上げてみたい。コンテンツの多くは筆者が近年、取材した医療・福祉施設の事例に拠っているが、一部には当該施設への直接取材ではなく、専門家や取材現場等で間接的に聞いた話も含まれているため、それらに関して施設名は、筆者の判断で一部匿名にさせて頂く。
 取り上げるコンテンツは高邁なマネジメント理論や手法ではなく、あくまでも現場から発想された実例集である。あくまでも私見ではあるが、大学の研究者やコンサルタント等、医療経営の専門家と称される方々の提唱する先進的かつ理論的、客観的なマネジメント手法よりも、医療・福祉施設経営者の“経験論”や“直観”、現場スタッフの“感性”等から導き出された「実践」から学ぶことの方が多いと感じられる。筆者が取材現場で発掘した、“チョットいい話”を出来る限り数多く紹介したい。

患者・利用者サービス編

(ケース①)病院コンシェルジュがホスピタリティの“見える化”を実現

 岡山県真庭市の金田病院で、患者を笑顔で迎えるのはホスピタル・コンシェルジュ(フロアマネジャーを兼務)の細田麻衣子さん。患者の要望に応えるだけでなく、車いすの患者の補助や耳の不自由な方には手話での対応や、お年寄りには受付の代行もする。
 この日は連携する病院の心療内科受診を希望される患者が来院。すぐに連携先病院にPHSで予約を確認する。何らかのアクシデントにより、外来診察時間が遅れた場合には自ら矢面に立ち、待っている患者の前で深々と頭を下げ、予定時間の遅れを詫びるとともに、包み隠さず現在の状況を説明する。毎日、病棟を回り患者の要望やクレームを聞いて、職員に的確に伝えていく。同院のコンシェルジュの業務は“もてなし”のサービスに留まらず、多岐に亘っており、高度なコミュニケーション能力が要求される仕事だ。保育士だった細田さんがこの仕事に就いたのは5年前に遡る。細田さんは「毎日、指示されて決まった業務をこなすのではなく、患者さんと対面しながら、患者さんの目線で考えて柔軟に対応していく仕事です。医療知識がなく最初は不安もありましたが、患者目線に立つ“技術”ではなく、“心”を見に付けることが重要と理解し、日常業務の中で工夫しながら感覚的に仕事を覚えていったような気がします」と話す。
 病棟訪問を始めてからは、患者一人ひとりの「声」を集めて、病棟に提出するようになったが、その中から実現に結びついた提案も幾つかある。例えば患者の希望により、病棟デイルームに簡易図書コーナーを設置して、書籍の貸し出しをスタートした。
 金田道弘院長は「当初はホスピタリティの“見える化”を目指したのだが、想像していた以上に病院職員に与える影響が大きい。最終的には病院職員全員がコンシェルジュのマインドを共有することが目標で、私たち病院経営管理責任者の思いを具現化し、全職員に“あるべき姿”を示してくれることに意義がある」と評価する。

93(13.09.06)