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[インタビュー]病医院職員へのコミュニケーション教育

㈱日本JAPAN・SIQ協会 講師
谷 洋子先生
(聞き手:医療ジャーナリスト:冨井 淑夫)

教育・研修の要諦は「感性」と「人間力」を磨くこと
管理職は積極的に“誉める”場を作ろう!

 ホテルやレストランを始めとするサービス業では、お客様は「サービスの対価を支払って下さるNO1の存在」として認識されている。医療機関は「治療」が優先されるにせよ、病医院スタッフも他のサービス業と同様に、コミュニケーション・スキルを磨くことが求められている。杓子定規でない物の見方や“気づき”、どのような問いかけや言葉の使い方を学ぶべきなのか?病医院だけでなく、様々な企業・団体でコミュニケーション教育に携わってきた谷洋子先生に、「感性」や「人間力」を磨くコミュニケーションのあり方について、お話を聞いた。

患者側に多様性があるからこそ、画一的でない様々な「話し方」がある

─谷先生は医療機関だけでなく、様々な企業、団体等でも社員教育の講師を務められていますが、コミュニケーション教育で医療機関独自の特殊性というのは、どういう点でしょうか?

  「接遇」に関して医療の世界では、サービス業で一般的な“お客様”という言葉はこれまで余り使われませんでしたし、“いらっしゃいませ!”、“ありがとうございました”等の言葉や敬語も、通常は使わないことが多いですね。どちらかと言うと、患者さんの診療が終了し帰られる時に、“お大事に”と声をかけるのがパターン化しています。
 ホテルやレストラン等、サービス業の世界では、お客様は「サービスの対価を支払って下さるNO1の存在」との認識が出来ていますが、病医院では「治療」が何よりも優先されるため、これまで「お客様意識」がスタッフに根付きにくかった一面もあると感じます。実際に看護師さんの中にも、敬語等を使うよりも自らの経験から「気取らない対応の方が良い」、「余りに慇懃無礼だと患者さんは身構えてしまう」と信じこんでいる人も多く、サービス業としての意識づけが難しいケースもあります。

─ただ病医院でも最近は、“患者様”と呼ぶ所も増えてきました。マニュアル重視や既成概念に縛られた画一的な対応では、患者の中には窮屈さを感じる人もいると思われます。

  私は教育の中で様々な患者さんが存在し、多様性があって色んな「話し方」があることを、職員の皆さんに理解して頂くように心がけています。要するに臨機応変に対応するには、自らの「感性」が何よりも重要になるのです。患者さんに“元気!”と声をかけると、“元気よ!”と返ってくる。このように“ご近所的”な感覚で接することを望む方もいれば、そうした対応を全く望んでいない人もいることを納得してもらうことから始めます。
 地域密着型の“ご近所”だけを対象にした診療所もあれば、都市型で名医による専門性や特色を打ち出し、全国から診断や治療を受けに来られる高機能病院も存在します。患者特性に合った受診環境を作っていかないと、乗り遅れてしまう場合も出てくるでしょう。

─確かに医療現場では、患者へ画一的に“様”を付けるのが良いのか否かの議論は、常に出てきますね?

  私も職員研修では「皆さんの病医院では、患者の名前を“さん”か“様”のどちらで呼んでいますか?」とまず聞きますが、どちらかを押し付けるようなことは、一切しません。医療機関の中では“○○様”で統一している施設もあれば、“様”と呼ぶのが不評だったため、“さん”に切りかえた施設もあります。要するに“さん・様”と言った瑣末なことが問題ではないのです。受診者側が「どう受け止めるのか?」が眼目で、名前を呼んだ時に目が合っているのか、微笑があるのか、優しさを感じて温かな対応と受け取れるかどうかが肝心です。○○様を使ったところで、受け取る側が「冷たく」感じるのであれば全くの逆効果です。○○さんの方が親しみやすく感じる人もいるだろうし、若い看護師さんと同世代の患者は○○君や、姓ではなく名前で呼んでもらう方が良いという人もいます。
 要するに個々の患者に合わせれば良いので、画一的にする必要は全くありません。納得できる説明が「何時でも出来るかどうか?」が肝心で、仮に患者さんが無理難題を主張された場合でも、「それはできません」と言うことを、いかにシンプルかつ優しく話せるかが問われるのです。受診者の思いを受け止める「感性」を磨くことが、研修では何よりも大事になってくるのです。

─職員が自分を「磨く」きっかけを作るのが、研修の重要な目的の一つですね。

  杓子定規ではない物の見方や“気づき”、個々の受診者にはどのような問いかけや言葉の使い方が良いのかを学ぶことが大事です。マニュアルでは限界がある、「人間力」を磨くことに尽きるだろうと思います。