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患者「主体」の退院調整の仕組みづくりを考える

退院調整機能の「質」を経済評価 入退院に関する「説明と同意」の重要性

 「退院調整」というキーワードには、医療施設側の恣意的な判断によって、患者を「管理・調整する」というニュアンスがある。勿論、厳しい医療費抑制策の中で生き残りを図ろうとする病院は、DPC等の政策誘導もあって、効率的かつ円滑な病床運営を避けられない経営環境下に置かれている。反面、病院側に在院日数短縮へのインセンティブが強く働くことで、患者側の意に沿わない「退院勧告」が行われるケースも想定される。当たり前のことだが、患者側の十分な理解と納得を得た上で病院を退院して頂き、自宅療養や在宅ケア、連携先病医院・介護施設へのスムーズな移行が何よりも求められる。そのためには退院調整のキーパーソンとなる看護師やMSW等が、入退院に関するインフォームド・コンセント(説明と同意)を適切に行った上で、きちんとした退院支援計画を提示すると共に、「患者視点」のキメ細やかな退院支援サービスを実施していくことが肝要だ。
 2010年診療報酬改定では、急性期病院の退院調整機能を評価するものとして「急性期病棟等退院調整加算Ⅰ・Ⅱ」(退院時1回)、退院後に介護サービスの導入が必要な患者に対して、ケアマネジャーと連携し退院後のケアプラン作成につなげることを評価するものとして「介護支援連携指導料」(入院中2回)が新設された(資料参照)。退院調整機能の「質」が経済評価されることは、「患者視点」で退院支援に尽力してきた病院にとっては朗報だし、新たに取り組もうとする病院にとっても追い風となる筈だ。
 そもそも医療業界で在院日数短縮が叫ばれ始めたのは、元号が変わる前の昭和63年(1988年)の診療報酬改定で、当時の入院時医学管理料(2000年4月より入院基本料に統合)に逓減制が導入された時期だったと記憶する。患者の入院日数が長期化する程、点数が下がるという政策誘導により、ピーク時には約40日だった一般病院全体の平均在院日数は、その後、急速に圧縮されていくことになる(現在は約19日)。
 1997年の診療報酬改定では平均在院日数「30日」を目安に、入院時医学管理料の再編が実施された。「30日」という目安がその後、DPCの導入等もあって徐々に短くなり、現在では「14日」を境にして、急性期・慢性期の施設機能の体系化が進められていったのは周知の通り。例えば2010年診療報酬改定でも入院基本料の様々な加算が新設されたが、「平均在院日数14日以内」の要件や、「14日」をボーダーラインとして点数が傾斜配分されている項目が目立つ。
 「患者視点」に立った場合に、このような診療報酬誘導には利点がある反面、マイナスの要素もある。例えば糖尿病等、「慢性期の患者を長期で診る」疾患に注力する病院には、公平性を欠くものにならざるを得ない。昔であれば一般的だった4週間前後の糖尿病の教育入院等は、患者が要望しても(一部の専門病院等を除くと)受診が困難になってきたのが現実だ。経営効率の良くない慢性疾患患者の入院を「抑制」する流れは、“患者本位”の視点に立てば、何らかの形で是正される必要があるだろう。
 さて次項では筆者がこれまでに取材した、「退院調整」に取り組む病院のケーススタディを取り上げる。ただ個々の事例を見ると、地域の疾病構造や高齢化率、当該病院の規模や機能、スタッフの質・量、地域の連携体制や医療資源の充足度等、病院の置かれている経営環境によって、方法論は無限に多面的だ。全ての事例がどの病院にも適用可能とは思わないが、その中でも普遍性があって参考にし易いケースを幾つか紹介したい。