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[インタビュー]消費税10%の衝撃!〜消費税増税が医療経営に与える影響

税理士・NPO法人「公的病院を良くする会」税制担当理事
船本 智睦先生
(聞き手:医療ジャーナリスト:冨井 淑夫)

「情報の非対称性」からモラル・ハザードのリスクも
 患者対策と資金対策の「両輪」による検討が不可欠

 「消費税率を2010年代半ばまでに段階的に10%まで引き上げる」ことを盛り込んだ「社会保障と税の一体改革成案(政府・与党社会保障改革本部決定)」が2011年7月1日に閣議報告された。
 1988年の消費税創設以来、欠陥税制とされてきた消費税であるが、医療機関の経営上、重大な影響を及ぼしている「損税問題」がある。
 この問題を解消することなく、消費税率の引き上げが実施された場合に、医療機関の経営に及ぼす影響は多大で、経営悪化により地域医療の崩壊を引き起こすといった状況が懸念される。医療関連団体は「損税問題」の解消策として、①非課税取引から課税取引に改める ②課税制度の変更時に行う逆進性対策を講じる ③課税制度の変更までに行う税制上の緊急措置を図る―等を要望している。
 消費税問題のスペシャリストである船本智睦先生に、医療機関は消費税増税に対して、どのように備えておくべきか、その影響と対策等を中心に話しを聞いた。

これまでの医療崩壊要因を助長し医療機関経営に「激震」

─医療費及び介護費用に関して、消費税は現状、非課税措置が取られていますが、医療機関が薬品や診療材料等の購入・委託費、設備の取得やリニューアル・コスト等に対して支払った消費税は控除されないことから、医療機関側の損税になっているという問題があります。医療団体等の調査によると、病院は年間平均3千万〜7千万の損税になっているとされ、現行の5%から7%、或いは10%に引き上げられた時には、更に大きな打撃を被ることになります。損税問題の解決策として、医療団体の中には現行の社会保険診療報酬の非課税を、課税取引に改めるべきとの要望もあります。そうなった場合に、病医院経営にどのような影響を招くのでしょうか?

  まず指摘したいのは、課税された場合には患者側の負担増から、受診抑制が起こる可能性が高いですね。また医師・看護師不足に起因する地域医療提供体制の混乱等、従来の医療崩壊要因を助長するリスクを内包していると思います。患者は経済的負担が大きくなると、医療機関の「選別」が更に厳しくなり、更なる競走の荒波にさらされることも予想されます。加えて医療訴訟やクレーマー、モンスター・ペーシェントと呼ばれる人達とのトラブルを、多発させる要素も多分に含んでいます。消費税問題は医療機関経営を「激震」させる要因を数多く抱えており、課税扱いで問題が全て解決するわけではないのです。

─具体的には?

  患者の自己負担が増えるのは当然ですが、患者はこれまで以上に受診した医療の「価格」に対して敏感になります。検査や処方された薬剤の費用等について、医療提供者側はきちんとした説明が必要です。インフォームド・コンセント(説明と同意)の周知も含めて、医師、看護師、受付窓口等、患者と接する医療従事者には、患者にきちんと対応出来るように、教育を徹底することが肝要です。
 診療報酬が課税になった場合に留意しなければならないのは、新たに別の問題が発生することです。消費税とは間接税であり、納税義務者(課税事業者)を通じて国に納めるのが原則ですから、現在、免税業者である小規模医療機関でも納税義務者となるわけです。課税事業者となる医療機関は、納税のための資金対策が必要ですが、未収金が経営を圧迫している病院も少なくない中で、更に未収金が増加する可能性が高まります。従って納税問題と未収金問題を一緒に捉えて、対策を講じる必要があります。従来通り非課税の場合でも、事業者である医療機関サイドが負担しているわけですから、医療機関側が被っている損税を、財務諸表上で明らかにして、取引先金融機関や外部の取引先に不可抗力のコストとして知らしめる努力も要るでしょう。