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病院経営を脅かす未収金の実態と具体的対策ノウハウ

国保保険料滞納者の割合は、加入世帯の20.9%と過去最悪

 昨年1月の厚生労働省の発表によると、自営業者や無職の人が加入し市区町村が運営する国民健康保険(国保)で保険料を滞納した世帯が、2008年6月1日時点で453万455世帯にも上りました。国保加入世帯は同時点で2171万7837世帯と前年比では14.9%(379万409世帯)減少していますが、これは同年4月から75歳以上の国保加入者が「後期高齢者医療制度」に移行したことが原因です。加入世帯に占める未納者の割合は20.9%と過去最悪、5世帯に1世帯が滞納している計算です。全都道府県で最も未納者の割合が高かったのは大阪府で、28.5%にも及び、4分の1以上の世帯が、国保保険料を滞納していることになります。
 保険料未納者の急増は言うまでもなく、不況で無職(失業者)や低所得者、非正規社員が増え、保険料を支払う余裕の無い人達が増えたのが最大の要因です。特に米国の金融危機に端を発した経済不況により景気悪化の直撃を受けた中小企業が倒産に追いこまれ、或いは多くの企業が社員のリストラを加速したことが、大きく影響していると思われます。09年度は景気後退により、環境がさらに悪化している可能性が高いと予測されます。
 保険料未納者の急増は病院にとって「未収金の膨張」に直結する問題であり、未収金による損金が雪ダルマ式に膨らんでいけば、病院にとっては“脅威”で、経営破綻の引き金にもなりかねない深刻な問題です。厚生労働省保険局が08年4月に発表した「未収金に関するアンケート調査 結果の概要」の一部を参考にしながら、病院における未収金の実態を見ていくことにしましょう。

平均の年度未収金総額は約5000万円、裁判所の調停に至るのは10%以下

 同調査は全国637病院がアンケートに回答したもので、回答病院の開設者は「医療法人」が55.4%と最も多く、次いで「公立」が12.9%、「公的」が10.5%でした[それ以外の病院の経営主体は個人やその他の法人、社会保険関係団体、学校法人等]。病床規模は「100〜199床」が最も多く30.3%を占めましたが、平均病床数は271.5床、中央値は200.0床で比較的大規模な病院からの回答が多くなっています。
 まず年度末未収金の1施設当りの平均値[表1]は、04年末で4559万1329円だったのが、05年度には4695万837円、06年には4790万4505円と増加傾向で推移。一方、07年度12月分の未収金の件数[表2]は回答した571病院の合計で1万8154件、1施設当りの未収金の件数は31.8件で、全患者数の中で未収金のある患者の比率は0.6%でした。
 07年12月分の未収金金額[表3]は回答した571病院・1施設当り147万83円。未収金1件当りの平均金額は4万6239円、入院1件当たりでは11万3043円、外来1件当たりでは1万1878円でした。
 次に支払い方法の工夫や未収金の回収方法(図1)については、「未収金患者リスト作成」が87.1%、「制度説明」が82.4%に及び、「相談窓口設置」「未収金マニュアル作成」を行っている病院も半数以上を占めますが、具体的な対策を講じているにも係らず、十分な成果が伴っていないことが分かります。未収金の回収努力(図2)に関しては、「電話催告」「文書催告」は100%近い病院で実施しているものの、裁判所による「支払い督促」「訴訟」、或いは「債券回収業者の利用」へと至るケースは10%以下に過ぎません。病院側・患者側の信頼関係を前提として最大限努力した結果、解決不能となった最後の手段として法的措置に至るケースが多いようです。また未収金件数のうち患者が「外国人である」ケースは1.8%、未収金の金額では2.8%を占めるに過ぎず、外国人の割合はそれ程多くはないことが分かります。未収の理由(図3)は多岐に及んでいますが、「生活に困っており、自己負担分の支払い資力なし」は10.3%と予想した程多くはなく、「支払い能力はあるが、元々支払う意思なし」(9.6%)と拮抗しているのには驚かされます。

[表1] 年度末未収金の1施設当り平均値の推移
  回答件数  未集金額
2004年度(末) 564 4559万1329円
2005年度(末) 589 4695万837円
2006年度(末) 604 4790万4505円

[表2] 2007年12月分の未収金の件数  n=571
  12月の
患者数
未収金の
件数(合計)
患者数に
対する比率
1施設当り
件数
全体(入院・外来) 296万8339 1万8154 0.6% 31.8
入院 24万1817 6166 2.5% 10.8
外来 272万6522 1万1988 0.4% 21.0

[表3] 2007年12月分の未収金の金額(円)  n=571
  未収金の
金額(合計)
1施設当り
平均金額
1件当り
平均金額
全体(入院・外来) 8億3941万7522 147万83円 4万6238円
入院 6億9702万5663 122万710円 11万3043円
外来 1億4239万1859円 24万9373円 1万1878円

図1,2 未収金・回収データ 図3 未収理由