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日本の病院事務長の肖像

優秀な事務長を生かすも殺すもトップ次第

 病院における“事務長の役割や機能とは一体何なのか?”について、一言で答えられる人はいません。日本の病院の多数派を占める民間病院(医療法人立や個人病院)における事務長の職責・機能・職能と言ったものは、トップマネジメントである理事長や院長の考え方、病院の機能・組織形態によって千差万別で統一されたものはないと言えるでしょう。
 病院トップが“優秀な事務長を欲しい”と言われる現場によく遭遇しますが、その“優秀”の定義というのは、極めて曖昧です。求められる役割が、「保険請求事務or経理のプロ」であるのか、はたまた「番頭さん」なのか、「労務管理の専門家」、または単なる「忠実なイエスマン」なのか、各々のトップの恣意的な判断に依っています。トップが「病院経営専門家」の必要性を訴えながらも、旧態依然の“家業的な”経営で、事務長に然るべき権限を与えていないケースも散見されます。トップの要求する役割が不明瞭なまま、特定の分野のスペシャリストを入職させても、病院組織では生かしようのない現実もあります。
 一般企業から管理職経験者をヘッドハンティングし、近代的・合理的な手法を導入して改革を進めようとしても、前近代的な経営体質に相容れず、退職を余儀なくされるのは、多々見られるケースです。トップが“優秀な事務長を欲しい”と叫ばれる病院ほど、「事務長の平均在職期間3ヶ月」というような所が多いのです。
 一般に「名事務長」と呼ばれるキャリアを作ってきた病院事務長は、一つの病院に長く在職し、理事長(院長)の経営のパートナーとして、長年に亘って風通しの良い組織風土を作るべく尽力し、人格的にも高潔で職員に慕われ、体系だった教育によって部下を育成してきた人達です。各都道府県に病院の事務長会が組織されていますが、大抵の場合、一つの病院で長年に亘って事務長を務めてきた「名事務長」が中心メンバーを占めています。
 一方、経営の悪化した中小病院に多いのは、ヘッドハンティングされた事務長がトップから「短期的な経営の建て直し」を要求され、目的を達するか、あるいはトップの思惑通りにいかない経営改善の“不成功”によって、病院を去っていくケースです。要するに経営悪化の「敗戦処理」を押し付けられ、最後には“使い捨てられる”という辛い役割です。
 大分昔の話ですが、ある病院事務長経験者が講演で、例えとして「唯我独尊地区とヒステリー村」という隠語を使ったことがあります。随分挑発的な物言いですが、前者は医局、後者は看護部門のことを指しています。現在医療界で求められているような「病院経営専門職」としての事務長が誕生することへの障害を考えるならば、資格者優位の医師をトップにしたピラミッド型組織に代表される古いマネジメント体質にあるのかもしれません。そして医師であるトップが古いマネジメント体質を変えようとする意志がなければ、病院組織で新しい発想を持った有能な事務長は生かされる筈もないのです。